熱力学における絶対零度の定義と歴史的背景

📌 主なポイント
- ✓絶対零度はセルシウス度で −273.15 °C、ケルビンで 0 Kである。
- ✓熱力学第三法則により、有限回の操作で物質を絶対零度に到達させることはできない。
- ✓量子力学の不確定性原理のため、絶対零度であっても原子は零点振動を行っている。
- ✓1954年の国際度量衡委員会で、水の三重点を基準として絶対零度が−273.15℃と定められた。
絶対零度(ぜったいれいど、Absolute zero)とは、熱力学温度(絶対温度)における下限値であり、セルシウス度(摂氏)で−273.15 °C、ファーレンハイト度(華氏)で−459.67 °Fに相当する温度である。

定義と物理的性質
温度は物質の熱振動をもとに規定されているため、原子の振動エネルギーが最低になった状態として下限が存在する。古典力学においては、エネルギーが最低の状態とは原子の振動が完全に停止した状態を指すが、量子力学の不確定性原理によれば、エネルギーが最低の状態であっても「零点振動」が維持されるため、原子の振動が完全に止まることはない。
また、熱力学第三法則によれば、ある有限の温度を持つ物質を、有限回の操作だけで絶対零度まで冷却することは不可能であるとされている。理想気体の状態方程式においては、0 Kにおいて圧力または体積が理論上ゼロになる。なお、統計力学においては0 K未満の「負温度」が存在することも知られており、極低温領域における現象は低温物理学の主な研究対象となっている。
歴史的経緯と絶対零度の値の決定
17世紀から18世紀にかけて、フランスの科学者ギヨーム・アモントンは気体の温度と圧力の関係を研究し、温度を下げていくと圧力がゼロになる下限が存在するのではないかと推測した。その後、ジャック・シャルルやジョセフ・ルイ・ゲイ=リュサックによる法則の発見を経て、絶対零度の値が−273 °C付近であることが示された。
日本においても絶対零度の正確な値の決定に向けた研究が行われ、1935年に木下正雄と大石二郎が気体温度計を用いて絶対零度が−273.15℃から−273.16℃の間にあるという結果を報告した。さらに1938年には、より高精度な等温線法を開発して同様の成果を挙げた。
1954年の第4回国際度量衡委員会において等温線法の利点が認められ、水の三重点を273.16ケルビン(K)と定める基準が採用された。これにより、水の三重点である摂氏0.01℃から273.16を引く計算(0.01 − 273.16)により、絶対零度は自動的に−273.15℃と定められることになった。
よくある質問
絶対零度とは何ですか?
絶対零度では原子の動きは完全に止まりますか?
物質を絶対零度まで冷やすことはできますか?
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参考文献
- K.メンデルスゾーン 著、大島恵一 訳『絶対零度への挑戦』講談社(ブルーバックス)、1971年。
- “<絶対零度=-273.15度>への挑戦”. 東京工業大学. 2023年4月24日閲覧。
- 広瀬茂久「絶対零度の決定に挑んだ日本の科学者」『熱測定』第41巻第3号、日本熱測定学会、2014年、99-103頁。