アドレナリンの科学的特性と医学的利用

📌 主なポイント
- ✓アドレナリンは副腎髄質から分泌されるホルモンであり、神経伝達物質としても機能する。
- ✓1901年に日本の化学者である高峰譲吉と助手の上中啓三がウシの副腎からの結晶化に世界で初めて成功した。
- ✓心停止やアナフィラキシーショックなどの緊急医療において不可欠な医薬品として使用されている。
アドレナリン(adrenaline、英名)またはエピネフリン(epinephrine、米名)は、主に副腎髄質から分泌されるホルモンであり、自律神経系の交感神経を介して作用する神経伝達物質でもある。分子式はC9H13NO3であり、生体におけるいわゆる「闘争・逃走反応(fight-or-flight response)」において中心的な役割を果たす。
生理学的効果
ストレスや恐怖、興奮などの状況に直面した際、アドレナリンが血中に放出されることで全身の諸器官に急速な変化が引き起こされる。主な作用には以下のものが挙げられる。
- 心筋収縮力の増大および心拍数の上昇
- 心臓、肝臓、骨格筋における血管の拡張
- 皮膚や粘膜における血管の収縮
- 気管支平滑筋の弛緩による呼吸時のガス交換効率の向上
- 瞳孔の散大(瞳孔散大反応)
- 肝臓におけるグリコーゲン分解促進による血糖値の上昇
構造と生合成
アドレナリンは、ドーパミンやノルアドレナリンとともにカテコールアミンに分類される化合物である。体内では、アミノ酸の一種であるL-チロシンからL-ドーパ、ドーパミン、ノルアドレナリンを経て順次生合成される。
歴史的発見
アドレナリンの発見と構造決定には複数の研究者の貢献がある。1900年、アメリカ・ニュージャージー州の研究所にいた高峰譲吉と助手の上中啓三は、ウシの副腎から有効成分の抽出を試み、1901年に世界で初めてその結晶化に成功した。これにより「アドレナリン」と命名された。一方、アメリカのジョン・ジェイコブ・エイベルはヒツジの副腎から分離した物質を「エピネフリン」と名付けたため、地域によって呼称の差異が生じることになった。日本国内では、2006年の日本薬局方改正により、公式な一般名がエピネフリンから高峰が命名した「アドレナリン」に変更されている。
医療用途
医薬品としてのアドレナリンは、救急医療や集中治療において極めて重要な位置を占める。主な適応には、アナフィラキシーショックに対する緊急投与、心停止時の蘇生処置、および気管支喘息発作における気管支拡張などが含まれる。投与経路としては、静脈内投与、筋肉注射、皮下注射などが病態に応じて選択される。
よくある質問
アドレナリンとエピネフリンの違いは何ですか?
アドレナリンは体内でどのような働きをしますか?
医療現場ではどのような疾患に用いられますか?
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参考文献
- “Structural Studies of Metabolic Products of Dopamine. III. Crystal and Molecular Structure of (−)-Adrenaline”. Acta Chem. Scand. 29b (2): 239–244. (1975). doi:10.3891/acta.chem.scand.29b-0239. PMID 1136652.
- “第十五改正日本薬局方-高峰譲吉発見・命名の「アドレナリン」を日本名として採用”. 愛知県衛生研究所 (2006年6月30日).
- Yamashima T (2003). “Jokichi Takamine (1854–1922), the samurai chemist, and his work on adrenalin”. J Med Biogr 11 (2): 95–102. PMID 12717538.