農業における薬剤と防除の仕組み

📌 主なポイント
- ✓農薬は農業の効率化や病害虫防除、農作物の保存に使用される薬剤の総称である。
- ✓20世紀前半まで天然物や無機物が中心だったが、第二次世界大戦後からDDTをはじめとする化学合成農薬が本格的に利用されるようになった。
- ✓日本では農薬取締法に基づき、製造や輸入における登録制度や、残留農薬に関する厳格な基準が設けられている。
農薬(のうやく、英語: agricultural chemical)とは、農業の効率化や農作物の保存に使用される薬剤の総称である。主に殺菌剤、防黴剤、殺虫剤、除草剤、殺鼠剤、植物成長調整剤などが含まれ、害虫や雑草の駆除に利用される天敵や捕食者は「生物農薬」と呼ばれる。
概要と変遷
農薬は元来、土壌や種子の消毒、発芽から結実までの虫害や病気の予防を目的としていたが、現代においては農業の生産性を高めるために使用される多様な薬剤として広義に解釈されている。近代農業において不可欠とされる一方で、人体や生態系への影響を考慮し、使用できる物質や量は法律によって厳しく制限されている。
歴史
紀元前から海葱を用いたネズミの駆除や、硫黄を用いた害虫駆除が行われてきた。17世紀にはタバコ粉、19世紀初頭には除虫菊やデリス根を利用した殺虫剤が用いられるようになったが、当時は天然物や無機化合物が中心であった。
20世紀に入ると化学合成農薬が登場し、1938年にパウル・ヘルマン・ミュラーがDDTの殺虫活性を発見したことを契機に、世界各国で殺虫剤の研究が急速に進展した。しかし、1962年のレイチェル・カーソンによる『沈黙の春』の発表などを背景に、農薬の過剰な使用に対する環境問題や健康被害への懸念が世界的な関心を集めるようになった。
分類
農薬は、その機能や用途に応じて次のように分類される。
生物的防除に用いられる生物農薬は、化学農薬に比べて薬剤耐性がつきにくいなどの利点がある反面、即効性が低いといった特徴を持つ。
法規制と安全性
日本においては、農薬取締法に基づき、農薬の製造者や輸入者に登録制度が設けられている。また、食品に対する残留農薬については、一日摂取許容量(ADI)を基準に残留基準が定められており、2006年からは「残留農薬等に関するポジティブリスト制度」が導入され、規制が強化されている。