農業

アグロフォレストリー:樹木と農作物を組み合わせる持続可能な土地利用

アグロフォレストリーの定義、歴史、および農地や牧草地に樹木を組み込む持続可能な農業形態としての特徴を解説します。

📌 主なポイント

  • アグロフォレストリーは、農業(agro-)と林業(forestry)を組み合わせた土地利用形態である。
  • 1978年に国際アグロフォレストリー研究センター(ICRAF)がナイロビに設立された。
  • ブラジルのトメアス式農法や、イベリア半島のデエサが代表的な事例として挙げられる。

アグロフォレストリー(agroforestry)とは、農地や牧草地に樹木を組み込み、農業、畜産、林業を統合的に行う土地利用形態である。森林農法、農林複合経営、混農林業とも呼ばれる。単一栽培(モノカルチャー)とは対照的に、樹木と農作物を共存させることで、生態系サービスの活用や生物多様性の維持を目指す手法である。

歴史的背景

アグロフォレストリー」という用語は、1970年代中期にカナダの国際開発研究センター(IDRC)の依頼を受けたジョン・ベネらが主導した研究の中で体系化された。1977年に発表された報告書『Trees, Food and People: Land Management in the Tropics』が重要な転換点となり、1978年にはナイロビに国際アグロフォレストリー研究センター(ICRAF)が設立された。

特徴と利点

アグロフォレストリーは、地域の気候や土壌、利用する樹種や農作物に応じて多様な形態をとる。主な利点として、以下の点が挙げられる。

  • 環境保全:森林破壊の抑制、土壌侵食の防止、および生物多様性の維持に寄与する。
  • 経済的安定:農作物に加えて木材、果実、飼料、燃料材など複数の収穫物を得ることで、農業と林業の双方から収入源を確保できる。
  • リスク分散:単一栽培と比較して、病虫害に対するリスクを分散させることが可能である。

地域別の事例

アマゾン地方の事例

ブラジル・アマゾン地方では、焼畑後に短期作物(米や豆類)を植え、次いで多年生の中期作物(コショウやパッションフルーツ)を導入する手法がとられる。中期作物が成長し日陰を作った段階で、果樹や有用高木(マホガニーやパラゴムなど)を植え込む。トメアス地域で発展した「トメアス式」は、病害による壊滅的被害を教訓に果樹を含む混植を導入したもので、現在ではブラジル政府も普及を支援している。

イベリア半島のデエサ

スペインやポルトガルに広がる「デエサ(dehesa)」は、コルクガシなどの樹木と草地を組み合わせた伝統的な森林牧畜形態である。この環境では、イベリコ豚をはじめとする家畜が放牧されており、持続可能な土地利用の代表的な事例として知られている。

よくある質問

アグロフォレストリーの主な目的は何ですか?
樹木と農作物を共存させることで、土壌保全や生物多様性の維持を図りつつ、持続可能な農業経営と経済的な安定を実現することを目的としています。
アグロフォレストリーはどのような場所で行われていますか?
熱帯地域のアマゾンから、イベリア半島のデエサのような温帯地域まで、世界各地で古来より行われています。
単一栽培(モノカルチャー)との違いは何ですか?
単一栽培が一種類の作物を集中的に生産するのに対し、アグロフォレストリーは樹木と農作物を混植することで、生態系サービスを活用し、病虫害リスクの分散や持続可能性を高める点に違いがあります。

関連記事

里山持続可能な農業森林牧畜生物多様性

参考文献

  • 日本農業新聞「'森に優しい'持続可能な農法 アマゾン地域 熱帯林再生で注目」2026年1月19日。
  • 国際アグロフォレストリー研究センター (ICRAF) 公式資料。
  • 環境省資料「スペイン・イベリコ豚の森林牧畜(dehesa:デエサ)」。
  • 国立国会図書館コラム「アマゾンのアグロフォレストリ」。