航空工学

エア・データ・コンピュータの仕組みと航空機における役割

高高度や高速で飛行する航空機において、気圧高度や対気速度、外気温度などを算出して電気信号として出力するエア・データ・コンピュータ(ADC)の仕組みと機能について解説します。

📌 主なポイント

  • エア・データ・コンピュータ(ADC)は、静圧、ピトー圧、外気温度などの入力を基に飛行データを算出する装置である。
  • 機外での直接測定では空気が圧縮されて温度が上昇するため、コンピュータによる計算で真の外気温度を算出する必要がある。
  • デジタル技術の発展に伴い、初期のアナログ式・機械式システムからデジタル・コンピュータへと移行した。

エア・データ・コンピュータ(英語: Air Data Computer、略称:ADC)は、高高度を高速で飛行する航空機において、機外の複数の物理量を同時に計測し、それらの情報を基に内部の計算処理を行って、飛行に必要な気圧高度、対気速度、外気温度などを算出して出力する装置である。日本語では外気情報処理機とも呼ばれる。

概要と必要性

航空機の飛行高度が高くなり、速度が増すにつれて、飛行中に必要な各種エア・データの計測は複雑化する。例えば、外気温度を測定する場合、単純に機外で計測しても、受感部に空気が衝突して圧縮されることで温度が上昇するため、実際の外気温度(真大気温度)を正確に知ることはできない。

これを解決するため、静圧、ピトー圧(動圧)、外気温度の計測を同時に行い、得られた入力情報に基づいてコンピュータが演算処理を行う。これにより、正確な気圧高度、対気速度、外気温度をはじめ、ATCトランスポンダの高度応答信号、気圧高度の変化率(昇降率)、機種や高度に応じた最大運用限界速度、マッハ数などの重要な飛行データを電気信号として出力する。

主な機能と処理データ

エア・データ・コンピュータは、以下のような多様なデータや機能を取り扱っている。

  • 各種補正と算出データ: 外部から受ける影響を補正するための温度・姿勢・加速度の情報、機体の静圧孔に生じる誤差を補正するSSECジャンパからの補正情報などを活用する。
  • 対気速度の種類: 指示対気速度(IAS)の誤差を修正した校正対気速度(CAS)、さらに空気密度の変化による誤差を修正した真対気速度(TAS)などを算出する。
  • 温度データ: 大気の真の温度である真大気温度(SAT)と、断熱圧縮により高く感知される全温度(TAT)を区別して扱う。
  • マッハ数の重要性: 音速近くで飛行する場合、高度上昇に伴い音速が低下するためマッハ数の把握が不可欠となる。また、衝撃波の発生を防ぐためにもマッハ数の算出が重要となる。
  • データ・ホールド機能: 飛行中のある時点における気圧高度、対気速度、昇降率、マッハ数の値を固定し、変化分を求めて自動操縦装置へ出力することで、定常飛行を維持する。
  • 異常監視機能: 内部の計算部、変換部、電源部などの作動状態を常時監視し、異常が検知された場合には関連する指示器や中央監視盤へ信号を出力する。

技術的変遷

初期に開発されたエア・データ・コンピュータは、カム、リンク、ポテンショメータ、サーボモータなどを組み合わせた電気・機械的なアナログ計算機および機械システムの複合体であった。しかし、その後の電子計算機の急速な発展に伴い性能が大幅に向上し、現在ではデジタル・コンピュータを使用したシステムが主流となっている。

よくある質問

エア・データ・コンピュータは何をする装置ですか?
高高度や高速で飛行する航空機において、静圧や動圧、外気温度などの測定値を入力とし、気圧高度、対気速度、マッハ数、昇降率などの飛行に必要なデータを計算して電気信号として出力する装置です。
外気温度を直接測定することが難しいのはなぜですか?
受感部に空気が衝突して圧縮されることで温度が上昇するため、そのままでは正確な外気温度(真大気温度)を測定できないためです。
初期のエア・データ・コンピュータはどのような仕組みでしたか?
初期の装置は、カム、リンク、ポテンショメータ、サーボモータなどを使用した電気・機械的なアナログ計算機と機械システムの複合体でした。

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参考文献

日本航空技術協会 編『航空計器』第1版第3刷、1989年。