航空機の失速警報装置と失速防止装置の仕組み

📌 主なポイント
- ✓失速警報装置は、航空機が失速状態に近づいた際にパイロットに危険を知らせる安全装置である。
- ✓ストール・ストリップは主翼前縁に突起を設け、意図的に発生させた乱気流で昇降舵を振動させる機械式機構である。
- ✓電子式システムではAOAセンサとコンピュータを用いてデータを処理し、電動モーターで操縦桿を振動させる。
- ✓ディープストール対策として、自動的に操縦桿を押し出すスティックプッシャーを備えた失速防止装置もある。
失速警報装置(しっそくけいほうそうち、英語: stall warning system)および失速防止装置(しっそくぼうしそうち、英語: stall protection system)は、航空機が失速状態に近づいた際、あるいは失速に陥った際にパイロットへ警告を発し、または自動的に機体姿勢を回復させるための航空機の安全装置である。
スティックシェイカー
失速警報として広く採用されている一般的な機構のひとつが、操縦桿を小刻みに振動させるスティックシェイカー(stick shaker)である。機体が失速直前の迎角に達した際、操縦桿が素早く振動することで、聴覚的な警告音や視覚的なランプ点灯に加え、触覚を通じてパイロットに危険を知らせる。
ストール・ストリップ

スティックシェイカーの機構の中で最も構造が単純なものとして、主翼前縁に設置されるストール・ストリップ(stall strip)がある。これは迎角の変化に伴って主翼前縁における気流のよどみ点が移動する原理を利用している。迎角が増大するとよどみ点が前縁下側に移動し、主翼上面へと回る気流の経路が変化する。ストール・ストリップと呼ばれる小さな突起を主翼前縁の適切な位置に配置することで、その局所的な気流の回り込みを妨げ、部分的な前縁失速(乱気流)を意図的に発生させる。
この乱気流が後方の昇降舵(エレベーター)に当たることで昇降舵が直接振動し、それに連結された操縦桿を前後に揺らす仕組みである。電子制御装置を必要としないため低コストであり、突起が破損しない限り確実に作動するという利点がある。一方で、突起の設置により僅かながら空気抵抗が増加し、氷結時などの複雑な気流変化に対応しにくいため、主に小型機などで利用されている。
電子式システム
現代の多くの航空機では、胴体側面や翼部に設置されたAOAセンサ(迎角計)と、飛行速度などのデータを統合して計算するコンピュータを組み合わせた電子式が採用されている。コンピュータが失速直前の状態を検知すると、電動モーターとフライホイールを駆動させて操縦桿を強力に振動させる。
また、ディープストールの影響を受けやすいT字翼機などの大型機では、失速時に昇降舵のコントロールを自動的に前方に押し出すスティックプッシャーシステムを含む失速防止装置が導入されている。これにより、強制的に迎角を減少させて失速状態からの脱図を図る。電子式はアビオニクスとの統合や気象条件に応じた設定変更が可能である一方、メンテナンスコストやシステム複雑化に伴うリスクを伴う。