航空計器

対気速度計の仕組みと役割

対気速度計の仕組みと役割
航空機の飛行速度を測定する計器である対気速度計(ASI)の仕組み、速度範囲の表示、および各種対気速度の定義について解説します。

📌 主なポイント

  • 対気速度計はピトー管からの全圧と静圧ポートからの静圧の差を測定する。
  • 速度計の文字盤の色分けは、航空機の安全な運用速度範囲を視覚的に示す。
  • 対気速度にはIAS、CAS、EAS、TASの4種類が存在する。

対気速度計(ASI: Airspeed Indicator)は、航空機が周囲の空気に対してどの程度の速度で移動しているかを表示する重要な航空計器です。パイロットは本計器を通じて、航空機の安全な運用に必要な速度情報をリアルタイムで把握します。

動作原理

対気速度計は、航空機のピトー静圧システムを利用して動作します。計器内部にはダイヤフラム(隔膜)が配置されており、ピトー管から取り込まれる全圧(動圧と静圧の合計)と、静圧ポートから取り込まれる静圧との圧力差を測定します。航空機が前進すると、ピトー管に流入する空気の圧力が高まり、この圧力差が機械的リンケージを介して指針を動かす仕組みです。

対気速度計の計器盤
一般的な対気速度計の表示盤

速度範囲の表示とマーキング

対気速度計の文字盤には、航空機の安全な運用範囲を示すための色分けされたマーキングが施されています。これにより、パイロットは一目で現在の速度が許容範囲内にあるかを確認できます。

  • 緑色の円弧:通常の運用範囲(VS1からVNO)を示します。
  • 白い円弧:フラップ動作範囲(VSOからVFE)を示し、着陸進入時に使用されます。
  • 黄色の円弧:滑空時など、穏やかな気象条件下でのみ飛行可能な速度範囲です。
  • 赤い線(VNE):超過禁止速度を示し、これを超えると構造的な損傷を招く恐れがあります。

多発機においては、エンジン故障時の制御限界を示すVmc(最小制御速度)や、片肺飛行時に最も効率的な上昇率が得られるVYSEを示すマーキングが追加されることが一般的です。

対気速度の種類

航空工学において、対気速度には以下の4つの定義が存在します。

  1. 指示対気速度(IAS):計器に直接表示される速度。計器誤差や設置誤差は含まれません。
  2. 較正対気速度(CAS):計器および設置誤差を補正した速度。
  3. 等価対気速度(EAS):CASに対して、空気の圧縮率の影響を補正した速度。
  4. 真対気速度(TAS):CASに対して、高度および非標準気温の影響を補正した速度。飛行計画の立案に使用されます。

ジェット機における特殊な表示

高速で飛行するジェット機では、レシプロ機のような固定の制限速度ではなく、マッハ数に基づいた制限が適用されます。そのため、対気速度計とマッハメーターが併用され、計器には「バーバーズポール」と呼ばれる自動的に移動する制限速度指針が装備されています。

よくある質問

対気速度計がゼロを示す原因は何ですか?
ピトー管の閉塞や、静圧ポートとの圧力差がない(地上停止時など)場合にゼロを示します。ピトー管が詰まると、速度の変化を正しく表示できなくなります。
真対気速度(TAS)はどのように求めますか?
較正対気速度(CAS)を高度と気温に基づいて補正することで求められます。フライトコンピュータ(E6Bなど)を使用するのが一般的です。
なぜジェット機にはマッハメーターが必要なのですか?
ジェット機は高高度の高速域で飛行するため、対気速度だけでなく、空気の圧縮率を考慮したマッハ数での制限(MMO)を監視する必要があるためです。

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参考文献

  • Pilot's Handbook of Aeronautical Knowledge, U.S. Dept. of Transportation, FAA (2016).
  • Airplane Flying Handbook, FAA-H-8083-3B, U.S. Dept. of Transportation, FAA (2016).