気象学

北極振動の概要と気候への影響

北極振動の概要と気候への影響
北極振動(AO)の定義や気候への影響、北半球の気温や気圧変動について解説する百科事典記事。

📌 主なポイント

  • 北極振動(AO)は、北極と北半球中緯度地域の気圧が相反して変動する現象である。
  • 1998年にデヴィッド・トンプソンとジョン・ウォーレスによって提唱された。
  • 北極振動指数が負の時には寒気の南下が強まり、中緯度地域で寒冷になりやすい。

北極振動(ほっきょくしんどう、英語:Arctic Oscillation:AO)とは、北極と北半球中緯度地域の気圧が相反して変動する大気現象である。テレコネクション(大気振動)の一種であり、気温や上空のジェット気流の流路などに大きな変化をもたらす。冬季にこの振動の振幅が大きくなると、北半球の高緯度・中緯度地域において寒波や大雪、あるいは異常高温といった気候的特徴が現れやすくなる。

北極振動の発見と特徴

1998年にデヴィッド・トンプソン(David W. J. Thompson)とジョン・ウォーレスによって提唱された。北半球の海面気圧の月平均値における平年からの偏差を主成分分析し、第1主成分として抽出される変動である。この変動は冬季に顕著に現れ、中緯度の気候と強く関連している。

北極振動の模式図。北極振動指数が負の時はジェット気流が大きく蛇行し、中緯度では東西に暖気と寒気が交互に並ぶ。正の時はジェット気流は帯状に流れる。
北極振動の模式図。北極振動指数が負の時はジェット気流が大きく蛇行し、中緯度では東西に暖気と寒気が交互に並ぶ。正の時はジェット気流は帯状に流れる。

北極の気圧が平年よりも高いときには中緯度の気圧が平年よりも低くなり、逆に北極の気圧が低いときには中緯度の気圧が高くなる。この偏差の程度を表す値を北極振動指数(AO指数)と呼ぶ。指数が正(+)の時は北極と中緯度の気圧差が大きいことを示し、寒気の流れ込みが弱まって温暖になる傾向がある。一方、負(-)の時は気圧差が小さく、寒気の流れ込みが強まって寒冷になりやすい。

1950年~2009年の北極振動指数の推移
1950年~2009年の北極振動指数の推移

気候への影響

北極振動指数が正の時は極を取り巻く寒帯ジェット気流が強まり、極からの寒気の南下が抑えられるため、ユーラシア大陸北部やアメリカ大陸北部などで平年より気温が高くなる傾向がある。反対に、指数が負の時はジェット気流が弱まり、極からの寒気の南下が活発化して気温が低めとなる。

例えば、2009年から2010年にかけての冬には、近年稀に見る強い負の北極振動が発生し、北半球高緯度の各地に寒波や大雪をもたらした。また、2012年から2013年の冬においても、負の北極振動が日本付近の寒冬に影響を与えた要因の一つとして挙げられている。

よくある質問

北極振動とは何ですか?
北極と北半球中緯度地域の気圧が相反して変動する大気現象であり、気温やジェット気流の流路に影響を与えます。
北極振動指数が正の時はどのような気候になりますか?
北極と中緯度の気圧差が大きくなり、寒帯ジェット気流が強まるため、高緯度・中緯度の一部地域で温暖になる傾向があります。

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参考文献

中村尚「北極振動 (新用語解説(49))」『天気』第49巻第8号、日本気象学会、2002年、687-689頁。