気象学

地球規模の大気循環の仕組みと構造

地球規模の大気循環の仕組みと構造
地球規模で発生する大規模な大気の流れである「大気循環」について、ハドレー循環、フェレル循環、極循環の3つのセル構造や熱輸送のメカニズムを解説します。

📌 主なポイント

  • 大気循環は、太陽放射による緯度間の熱不均衡を解消するために発生する。
  • 南北方向の循環は、ハドレー循環、フェレル循環、極循環の3つのセルから構成される。
  • ハドレー循環は直接循環、フェレル循環は間接循環として分類される。
  • ウォーカー循環は太平洋の海水温差に起因する東西方向の大気循環である。

大気循環(atmospheric circulation)とは、地球規模で発生する大規模な大気の流れのことです。太陽から地球へ供給される熱エネルギーの緯度による不均衡を解消するため、大気は絶えず移動し、熱を低緯度から高緯度へと輸送しています。この循環構造は、数週間から数か月のスパンで見ると一貫したパターンを形成しています。

熱輸送のメカニズム

地球の気象現象の原動力は太陽放射です。赤道付近は高緯度地域に比べて太陽放射による受熱量が多いため、地球全体で熱の不均衡が生じます。この温度差を解消するために、大気は海流や潜熱輸送と協力して熱を南北方向に移動させています。特に大気による熱輸送は、地球全体の熱収支を維持する上で極めて重要な役割を果たしています。

南北方向の循環構造

地球の大気循環は、単純な対流ではなく、緯度帯ごとに3つの主要なセル(循環)に分かれています。

3つのセルからなる大気循環の模式図
3つのセルからなる大気循環の模式図

ハドレー循環

赤道付近で暖められた空気が上昇し、上空を通って中緯度(北緯・南緯30度付近)へ向かい、そこで下降して再び赤道へ戻る循環です。熱帯収束帯で上昇した空気が熱を中緯度へ運ぶ「直接循環」であり、貿易風の形成にも深く関わっています。

フェレル循環

ハドレー循環と極循環の間に位置する、中緯度(北緯・南緯30度〜60度付近)の循環です。この循環は直接的な熱対流ではなく、移動性高気圧や温帯低気圧などの波動(偏西風波動)によって熱を輸送する「間接循環」として知られています。

極循環

極付近で寒冷な空気が下降し、地表付近で低緯度側へ流れる循環です。他の2つの循環と比較して規模や強さは限定的です。

大気循環の立体的な図解
大気循環の立体的な図解

東西方向の循環とウォーカー循環

南北の循環に加え、東西方向にも大規模な循環が存在します。その代表例が「ウォーカー循環」です。これは太平洋の東西における海水温の差によって引き起こされる循環であり、エルニーニョ・南方振動(ENSO)とも密接に関連しています。また、海陸の比熱差によって生じる海陸風や季節風も、東西方向の大気循環の一種です。

500hPa鉛直流の年平均分布
500hPa鉛直流の年平均分布(1979-2001年)。青・紫色系は上昇気流(低圧帯)、赤・黄色系は下降気流(高圧帯)。

よくある質問

大気循環の主な役割は何ですか?
赤道付近で余剰となり、極付近で不足している熱エネルギーを南北方向に輸送し、地球全体の温度バランスを維持することです。
ハドレー循環とフェレル循環の違いは何ですか?
ハドレー循環は熱対流によって直接熱を運ぶ「直接循環」ですが、フェレル循環は偏西風波動などの擾乱によって熱を運ぶ「間接循環」です。
ウォーカー循環とエルニーニョ現象の関係は?
ウォーカー循環が弱まると貿易風が減退し、東太平洋の海水温が上昇するエルニーニョ現象が発生します。

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参考文献

  • 小倉義光『一般気象学』第2版、東京大学出版会、1999年。
  • 岩槻秀明『最新気象学のキホンがよ〜くわかる本』第2版、秀和システム、2012年。