クラシック音楽

ヨハネス・ブラームスの交響曲第2番ニ長調作品73の歴史と特徴

ヨハネス・ブラームスの交響曲第2番ニ長調作品73の歴史と特徴
ヨハネス・ブラームスが1877年に作曲した交響曲第2番ニ長調作品73の作曲背景、初演、楽器編成、各楽章の楽曲構成について詳しく解説します。

📌 主なポイント

  • ヨハネス・ブラームスの交響曲第2番ニ長調作品73は1877年に作曲された。
  • 南オーストリアのペルチャッハで避暑中に短期間で集中的に書き上げられた。
  • 初演は1877年12月30日にハンス・リヒター指揮のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によって行われた。
  • ブラームスの交響曲の中で、唯一チューバが使用され、コントラファゴットが使用されていない編成である。

ヨハネス・ブラームスの交響曲第2番ニ長調作品73(こうきょうきょくだい2ばんニちょうちょうさくひん73)は、ドイツの作曲家ヨハネス・ブラームスによって1877年に作曲された交響曲である。長年にわたり苦悩の末に完成された第1交響曲とは対照的に、伸びやかで快活な雰囲気を持ちながらも、精緻な構成美と統一性を備えている点に特徴がある。その作風から、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの交響曲第6番になぞらえて「ブラームスの『田園』交響曲」と称されることもある。

作曲の経緯

ブラームスが交響曲第2番を作曲したペルチャッハの風景
ブラームスが交響曲第2番を作曲したペルチャッハ

1877年6月、ブラームスは南オーストリアのケルンテン地方に位置するヴェルター湖畔のペルチャッハに避暑のため滞在し、そこで本作の作曲に着手した。同年9月にはほぼ作品を完成させ、10月にバーデン=バーデン近郊のリヒテンタールへ移って全曲を書き上げた。

第1交響曲の完成までに20年以上の歳月を費やしたのに対し、およそ4ヶ月という短期間で書き上げられた点は特筆される。ペルチャッハの豊かな自然環境は創作活動に大きく寄与し、のちに批評家のエドゥアルト・ハンスリック宛ての手紙の中で、この地に多くのメロディがあふれている様子をユーモラスに伝えている。ペルチャッハでの夏はその後も続き、ヴァイオリン協奏曲やヴァイオリンソナタ第1番「雨の歌」などもこの地で生み出された。

初演と日本初演

本作の初演は1877年12月30日、ハンス・リヒターの指揮によるウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で行われた。初演は大成功を収め、特に第3楽章が聴衆の強い要望によりアンコールされた。翌年9月には、故郷ハンブルクにおいてブラームス自身の指揮により再演されている。

日本における初演は、1927年(昭和2年)12月17日に東京音楽学校(現在の東京芸術大学音楽学部)構内の奏楽堂で開催された第53回定期演奏会において行われた。当時は同学校の教員であったチャーレス・ラウトロプが指揮を務めた。

楽器編成

本作のオーケストレーションは以下の通りである。

  • 木管楽器: フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2
  • 金管楽器: ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、チューバ1
  • 打楽器: ティンパニ一対
  • 弦楽器: 弦五部

ブラームスの他の交響曲で使用されているコントラファゴットが含まれておらず、代わりに第2番だけにチューバが起用されている点が管弦楽法上の大きな特徴となっている。

資料画像1
交響曲第2番に関連する歴史的資料

楽曲構成

全体は4つの楽章で構成されており、通常の演奏時間は約45分程度(第1楽章の提示部反復を含む)である。

第1楽章: Allegro non troppo

ニ長調、3/4拍子、ソナタ形式。冒頭に低弦が奏する「ニ-嬰ハ-ニ」の音型が、全曲を統一する重要な基本動機となる。ホルンによる牧歌的な第1主題のあと、チェロが奏する第2主題へと移行する。第2主題の冒頭は、歌曲「ブラームスの子守歌」の旋律を変形したものを基にしている。

資料画像2
楽譜または楽曲分析に関する資料

第2楽章: Adagio non troppo - L'istesso tempo, ma grazioso

ロ長調、4/4拍子、自由なソナタ形式。チェロとファゴットの対旋律によって表情豊かに第1主題が提示される。ブラームス自身がこの主題について自身の生涯で最も美しい旋律であると語ったという伝承が存在する。

資料画像3
演奏会や直筆譜に関する資料

第3楽章: Allegretto grazioso (Quasi andantino) - Presto ma non assai - Tempo I

ト長調、3/4拍子。ABABAの形式をとり、チェロのピッツィカートに乗ってオーボエが基本動機の反行形である主題を軽快に奏でる。

第4楽章: Allegro con spirito

ニ長調、2/2拍子、ソナタ形式。弦楽器のソット・ヴォーチェによる第1主題の提示から始まり、やがて全休止を挟んでフルオーケストラによる力強い展開へとつながる。終結部は金管楽器によるコラール風の響きを交え、華やかに全曲を締めくくる。

資料画像4
初演やオーケストラに関連する資料

よくある質問

交響曲第2番が「ブラームスの『田園』交響曲」と呼ばれるのはなぜですか?
南オーストリアのペルチャッハの美しい自然の中で作曲され、伸びやかで牧歌的な雰囲気を備えていることから、ベートーヴェンの交響曲第6番になぞらえてそう呼ばれることがあります。
交響曲第2番の初演はいつどこで行われましたか?
1877年12月30日に、ハンス・リヒターの指揮するウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によって初演されました。
他のブラームスの交響曲と比べたときの楽器編成上の特徴は何ですか?
他の交響曲で使われているコントラファゴットが使用されておらず、代わりにブラームスの交響曲で唯一チューバが採用されている点が大きな特徴です。

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参考文献

  • 飯村諭吉「昭和初期におけるヨハネス・ブラームスの交響曲の紹介方法~新交響楽団の機関紙における曲目解説に着目して」『音楽表現学』第19巻、日本音楽表現学会、2021年、2頁。