植物学
コケ植物の生物学と系統進化

維管束を持たず胞子散布を行う陸上植物であるコケ植物について、生活環、配偶体と胞子体の構造、および最新の分子系統解析に基づく分類体系を解説します。
📌 主なポイント
- ✓コケ植物は維管束を持たず、胞子散布によって繁殖する陸上植物である。
- ✓生活環においては、核相が単相の配偶体世代が優占し、複相の胞子体は半寄生生活を送る。
- ✓形態的な特徴から、蘚類・苔類・ツノゴケ類の3群に大別される。
コケ植物(英: bryophyte)とは、維管束を持たず、胞子散布を行う、単相(n)の有性の配偶体世代が優占する陸上植物の一群である。日本では約1665種、世界中でおよそ2万種ほどが記録されている。植物体(配偶体の本体)の形態により、葉と茎の区別が明確な茎葉体と、その区別が曖昧な葉状体に大別される。
生活環と世代交代
陸上植物は単相世代である多細胞配偶体と、複相世代である多細胞胞子体が交互に出現する世代交代を行う。コケ植物では単相の配偶体が優占し、複相の胞子体は配偶体に栄養を依存する半寄生生活を送る。
配偶体世代
胞子が発芽すると原糸体が形成され、それが分化して配偶体の本体となる。蘚類の原糸体はクロロネマからカウロネマへと分化し、そこから茎葉体を形成する。一方、苔類やツノゴケ類では糸状の構造が発達しにくく、細胞の塊や短い糸状を経て葉状体や茎葉体を形成する。配偶体がある程度成長すると造卵器と造精器が形成され、水に触れた精子が泳ぎ出して受精が行われる。
胞子体世代
受精卵はその場で発生を始めて胞子体を形成する。コケ植物の胞子体は分枝せず、先端に単一の胞子嚢(蒴)を形成して成長を終了する。蒴の内部では減数分裂が行われ、単相の胞子が形成されて外部へと放出される。
系統関係と分類
コケ植物は伝統的に蘚類・苔類・ツノゴケ類の3群に大別される。初期の研究では単系統群と考えられていたが、その後の分岐学的解析や分子系統解析により、維管束植物に対する側系統群とする説が有力視されていた。しかし、近年のより大規模なデータセットを用いた分子系統解析により、3群が再び単系統群をなし、残りの現生陸上植物である維管束植物と姉妹群をなすことが示されている。
よくある質問
コケ植物にはどのようなものがありますか?
コケ植物は大きく分けて、蘚類(せんるい)、苔類(たいるい)、ツノゴケ類の3群に大別されます。
コケ植物の配偶体と胞子体の違いは何ですか?
配偶体は単相(n)であり、光合成を行って植物体の本体を形成します。胞子体は複相(2n)であり、配偶体の上で半寄生しながら成長し、減数分裂によって胞子を作ります。
コケ植物には維管束がありますか?
いいえ、コケ植物には典型的な維管束はありません。ただし、一部の蘚類の茎葉体にはハイドロームやレプトームと呼ばれる通導組織が分化することがあります。
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参考文献
- 長谷部光泰 『陸上植物の形態と進化』 裳華房、2020年。
- 岩月善之助 『日本の野生植物 コケ』 平凡社、2001年。
- Puttick et al. "The uncertain phylogenetic position of bryophytes..." 2018.