材料科学・金属加工

ブリキ(錻力)の特性、製造技術および歴史

ブリキ(錻力)の特性、製造技術および歴史
ブリキ(錻力)の定義、鉄鋼とスズによる表面処理の特性、製造方法の変遷、および日本のブリキ玩具の歴史について解説します。

📌 主なポイント

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ブリキ(錻力、鉄葉は当て字、語源はオランダ語の「blik」)は、薄い鉄鋼(鋼板)の表面にスズ(純スズ)を被覆させた表面処理鋼板である。缶詰容器をはじめとする耐食性が求められる部材に用いられてきたほか、近代以降は玩具の材料としても広く利用されてきた。「錻」の字は日本で作られた国字である。

特性と防食メカニズム

イオン化傾向を比較すると、スズは鉄よりも腐食しにくい性質を持つ。そのため、鋼板の全面をスズで覆うことによって鉄の腐食を防ぐことができる。しかし、表面のコーティングに傷がつき、一部でも下地の鉄が露出すると、スズが鉄の腐食をむしろ促進させる働きをするため、その箇所から急速に錆が広がるのが構造上の欠点である。

これに対し、鉄板に亜鉛をメッキしたものはトタンと呼ばれる。亜鉛自体は鉄よりも錆びやすい金属であるが、鉄が露出した場合には亜鉛が優先的に犠牲腐食(犠牲防食)を起こすため、結果として鉄の腐食を遅らせ、全体として優れた耐食性を発揮する。

製造方法の変遷

ブリキの製造手法には、大きく分けて熱せき法と電気メッキ法が存在する。歴史的には、溶融したスズの中に鋼板を直接浸す「熱せき法」が用いられていた。しかし、第二次世界大戦後には電気メッキ法が導入され、特にフェノールスルホン酸スズを電解液とする「フェロスタン法」が主流となったことで、従来の熱せきブリキは次第に姿を消していった。

主な用途

ブリキは、その優れた加工性と防食性を活かして様々な用途で使用されてきた。

  • 缶詰容器:開発当初からブリキが素材として活用されてきた。第二次世界大戦中にスズの供給難に直面したアメリカ合衆国で電気メッキ法が考案され、スズの使用量を劇的に減少させる技術的進歩がもたらされた。戦後は浸せきクロム酸処理鋼板なども開発され、用途に応じた素材の多様化が進んでいる。
  • 缶飲料容器:かつては飲料缶にもブリキが使われていたが、現代ではスズを含まないティンフリースチール(TFS)が主流となっている。
  • その他の日用品:プラスチック製品と比較して重量はあるものの耐久性に優れるため、業務用や防災用のバケツなどに採用例がある。

ブリキの玩具の歴史

日本国内では、ブリキ板をプレス加工や塗装によって自動車、鉄道車両、船舶、航空機、ロボットなどの形状に成形したものは「ブリキのおもちゃ」として知られ、昭和初期から中期にかけての生活史を伝える文化財・懐古趣味の対象となっている。

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よくある質問

ブリキの語源は何ですか?
オランダ語で「板金・鈑金」を意味する「blik」が語源であると考えられています。
ブリキとトタンの違いは何ですか?
ブリキは鉄板にスズをメッキしたものであり、トタンは鉄板に亜鉛をメッキしたものです。トタンは鉄が露出した際に亜鉛が優先して腐食するため鉄を守りますが、ブリキは鉄が露出するとスズが鉄の腐食を促進させる特性があります。
日本のブリキ玩具はどのように発展しましたか?
明治初頭に石油缶の空き缶の再利用から始まり、大正時代に八幡製鉄所でブリキの国内生産が始まると国内メーカーが台頭しました。戦後の1950年代から1960年代にかけては重要な輸出品となり、外貨獲得に貢献しました。

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参考文献

  • 『日本経済新聞』土曜朝刊別刷り「NIKKEIプラス1」2021年6月26日.
  • 前田重義「鉄鋼の表面処理」『色材協会誌』56巻 9号, 1983年.
  • 日本製罐協会「製罐技術の変遷」.
  • 上 笙一郎編『日本<子どもの歴史>叢書 ; 18 ; 日本金属玩具史』久山社, 1997年.
  • 下川耿史 家庭総合研究会編『明治・大正家庭史年表:1868-1925』河出書房新社, 2000年.