自動車技術

キャブレター(気化器)の仕組みと構造

キャブレター(気化器)の仕組みと構造
ガソリンエンジンにおける燃料供給装置であるキャブレターの仕組み、構造、種類、および歴史的背景について解説します。

📌 主なポイント

  • キャブレターはベルヌーイの定理を利用して燃料を空気と混合する装置である。
  • 自動車やオートバイでは、排出ガス規制への対応から燃料噴射装置への移行が進んだ。
  • 小型エンジンや発展途上国向けの車両では、構造の簡便さと低コスト性から現在もキャブレターが使用されている。

キャブレター(英: carburetor, carburettor)は、ガソリンや液化石油ガス(LPG)などを燃料とする内燃機関において、燃料を空気と霧状に混合し、燃焼に適した混合気を作る装置です。日本語では「気化器」とも呼ばれます。

基本原理

液体燃料用のキャブレターは、流体力学におけるベルヌーイの定理を利用しています。吸入空気の流路に「ベンチュリ」と呼ばれる絞り部を設け、空気がここを通過する際に流速が増加することで静圧が低下します。この負圧を利用して、燃料チャンバーからジェットを通じて燃料を吸い出し、空気中に霧状に噴霧・蒸発させることで混合気を形成します。

主な構成と種類

キャブレターは、ベンチュリの数や配置、燃料制御方式によって分類されます。

  • ベンチュリの数: 1つのベンチュリを持つ「シングルバレル」から、エンジンの負荷に応じて段階的に作動する「ステージドキャブレター(マルチバレル)」まで存在します。
  • ベンチュリの方向: 吸入空気の流れ方向により、ホリゾンタルドラフト(サイドドラフト)、アップドラフト、ダウンドラフトに分けられます。
  • 燃料チャンバー: 燃料を一時的に溜める構造として、浮き(フロート)を用いるフロートチャンバーや、ダイヤフラムを用いる方式があります。

歴史的変遷と現状

かつては自動車やオートバイの燃料供給の主流でしたが、排出ガス規制の強化や燃費性能の向上に伴い、より精密な制御が可能な燃料噴射装置(フューエルインジェクション)へと移行しました。日本国内の市販車においても、2000年代初頭までにほぼすべての車種で燃料噴射装置が採用されるようになりました。

一方で、チェーンソーや刈払機などの小型エンジンでは、構造が単純で部品コストが低く、電気系統を必要としない利点から、現在でもキャブレターが広く利用されています。

電子制御式キャブレター

1980年代には、排ガス規制に対応するため、O2センサーからの信号に基づきECUが空燃比を制御する「電子制御式キャブレター(ECC)」が普及しました。これは当時の燃料噴射装置よりも安価で、既存のキャブレター設計を大きく変更せずに導入できたため、廉価な車両を中心に採用されましたが、1990年代中盤以降は燃料噴射装置のコスト低下により姿を消しました。

よくある質問

キャブレターと燃料噴射装置の主な違いは何ですか?
キャブレターは吸入空気の負圧を利用して機械的に燃料を吸い出す方式ですが、燃料噴射装置は電子制御等により精密に燃料を噴射する方式です。
なぜ現代の自動車ではキャブレターが使われなくなったのですか?
排出ガス規制の強化や燃費性能の向上に対し、より緻密な空燃比制御が可能な燃料噴射装置の方が適しているためです。
キャブレターはどのような場所で現在も使われていますか?
チェーンソーや刈払機などの小型エンジン機器や、一部の発展途上国向け小排気量車両などで使用されています。

関連記事

内燃機関ガソリンエンジン燃料噴射装置空燃比

参考文献

  • Principles of Gas Carburetion, Alternate Fuels Technologies, Inc.
  • 自動車技術会「排出ガス対策を中心にしたスバルエンジンの開発」山岸曦一
  • ホンダ・PGM-CARB技術資料