着氷現象の科学と社会への影響

📌 主なポイント
- ✓着氷は氷点下の環境で水滴が凍結、または水蒸気が昇華して物体に付着する現象である。
- ✓発生しやすい気温の目安は0℃から-10℃であるが、より低温でも発生しうる。
- ✓大気中の水から生じる着氷には霧氷(樹氷・粗氷)、樹霜、雨氷などが含まれる。
- ✓航空機や船舶、電線などの社会インフラに深刻な影響を与えることがある。
着氷(ちゃくひょう、英: icing, ice accretion)とは、氷点下の環境において、水滴が物体に付着して凍結したり、大気中の水蒸気が物体に昇華したりすることによって氷が形成される現象、およびその氷自体のことを指します。

着氷の発生条件
着氷は、頻度としては気温0℃から-10℃の間で発生しやすいですが、-40℃近い低温環境でも生じることがあります。形成される氷の形や性質は、気温、風速、雲粒の特性、物体の大きさや形状、表面の粗度や材質といった複数の因子によって変化します。
例えば、気温が低く風速が小さい条件では粒状構造を持つ霧氷になりやすく、気温が低く風速が大きい場合には気泡構造を持つ粗氷が形成されます。また、気温が0℃付近と比較的高く、風速が大きく雲水量が多い環境では雨氷が生じます。風速が小さくなるほど、氷の表面の凹凸が著しくなる傾向があります。
大気中の水から生じる着氷の分類
気象観測や雪氷学において、大気中の水に起因する着氷はいくつかの種類に分類されます。『最新 気象の事典』や気象庁の『気象観測の手引き』、日本雪氷学会の『新版 雪氷辞典』などでは、主に以下のように定義されています。
- 霧氷(rime):物体に付く層状の氷の総称であり、樹氷、粗氷、樹霜が含まれます。
- 樹氷(soft rime):過冷却の霧や雲の粒子が物体に吹き付けて凍った、白色不透明でもろい氷です。薄い針状や尾びれ状、えびの尻尾状の塊が集まって構成されます。
- 粗氷(hard rime):過冷却の霧や雲の粒子が凍ったもので、白っぽい半透明または透明に近く、樹氷よりも硬い性質を持ちます。表面はやや滑らかで、内部には無数の気泡が含まれます。
- 樹霜(hoarfrost, air hoar):空気中の水蒸気が物体表面に昇華してできた氷の結晶です。結晶が目立つのが特徴です。
- 雨氷(glaze):過冷却の雨や霧雨が物体に吹き付けて凍った、透明で層状の氷です。均質で強く付着し、気温が0℃近くのときに発生します。

世界気象機関(WMO)の『国際雲図帳』やアメリカ気象学会(AMS)の気象学用語集でも、icingの分類やrime、glaze、hoar frostの位置づけについて同様の定義や細分化が示されています。
社会インフラへの影響
着氷は、日常生活や産業活動においてさまざまな障害や事故を引き起こす要因となります。主な影響として、電線、鉄道、船舶、航空機への被害が挙げられます。
電線着氷
電線への着氷は、断線や鉄塔の倒壊、それに伴う大規模な停電を引き起こすことがあります。風を受けることで激しい振動(ギャロッピング現象)を起こす点では着雪と共通しますが、着雪が一定以上の強風で発達しなくなるのに対し、着氷は風が強くなるほど急速に発達するという違いがあります。日本では、被害のおそれがある場合に気象台から「着氷注意報」が発表されます。

航空機着氷
航空機が雲内の過冷却水滴や過冷却の雨の中を飛行する際、機体に着氷が発生します。数分間の着氷であっても、空力特性を変化させて揚力を低下させ、失速を引き起こす危険性があります。また、エンジン吸気口やピトー管の閉塞、動翼の作動不良などを招くこともあります。このため、離陸前の除氷作業や防氷システムの稼働が規定されています。


船舶着氷
寒冷海域を航行する船舶では、波飛沫が船体にぶつかって凍り付く現象が発生します。過度な着氷は船の重心を高め、復原力を減少させて転覆のリスクを高めます。気象庁は、船舶の安全確保のために「海上着氷警報」を発表しています。

よくある質問
着氷はどのような気象条件で発生しやすいですか?
樹氷と粗氷の違いは何ですか?
航空機にとって着氷が危険な理由は何ですか?
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参考文献
- 最新 気象の事典、東京堂出版、1993年。
- 新版 雪氷辞典、古今書院、2014年。
- 気象観測の手引き、気象庁、2007年。
- International Cloud Atlas(国際雲図帳)、世界気象機関(WMO)、2017年。