化学

カルコゲン化水素の化学的性質と分類

カルコゲン化水素の化学的性質と分類
酸素族元素(カルコゲン)と水素からなる二元的化合物であるカルコゲン化水素について、その構造や物性、二カルコゲン化合物である過酸化水素などを解説します。

📌 主なポイント

  • ✓カルコゲン化水素は酸素族元素(カルコゲン)と水素から構成される二元的化合物である。
  • ✓化学式H2Xで表されるカルコゲン化二水素は折れ線形の分子構造を持ち、極性を有する。
  • ✓水を除く多くのカルコゲン化二水素は毒性が高く、特徴的な腐敗臭を持つ。
  • ✓H2X2で表される2つのカルコゲンを含む二水素化物のうち、過酸化水素(H2O2)が最も広く知られている。

カルコゲン化水素(カルコゲンかすいそ)は、酸素族元素であるカルコゲンと水素が結合して形成される二元的化合物の総称であり、水素化カルコゲンとも呼ばれる。対象となる元素には酸素、硫黄、セレン、テルル、ポロニウムが含まれる。このグループの中で最初に発見された化合物は水であり、地球上で最も一般的かつ豊富に存在する水素化カルコゲンである。

カルコゲン化二水素化合物

カルコゲン化二水素の化学構造を示すモデル図
カルコゲン化二水素の化学構造を示すモデル図

酸素族元素の主要な水素化物は、カルコゲンを表す記号をXとして化学式H2Xで表される。これらの化合物はいずれも三原子分子であり、折れ線形の分子構造をとり極性を有する。

水(H2O)は地球上の生命の維持に必須な物質であり、地表の約70.9%を覆っている。これに対し、他のカルコゲン化二水素化物の多くは強い毒性を持ち、腐卵臭や野菜の腐敗臭を発する特徴がある。例えば硫化水素(H2S)は、低酸素環境下での有機物の分解によって生じることが多く、火山ガスとしても産生される。有毒な気体である一方、生体内では微量が産生され細胞シグナル伝達に関与している。

カルコゲン化二水素の物理的性質を比較する分子モデル表現
カルコゲン化二水素の物理的性質を比較する分子モデル表現

水は、分子量がテルル化水素以下である他のカルコゲン化二水素を溶解して酸性の溶液を形成する。この溶液の酸性はハロゲン化水素と比較して弱いものの類似した傾向を示し、カルコゲンの原子量が大きくなるにつれて酸性度が増大する。ポロニウム化水素が水とどのような酸性溶液を形成するのか、あるいは金属水素化物に近い性質を示すのかについては、明確に解明されていない。

化合物 水溶液 化学式 pKa
水 水 H2O 13.995
硫化水素 硫化水素水 H2S 7.0
セレン化水素 セレン化水素水 H2Se 3.89
テルル化水素 テルル化水素水 H2Te 2.6
ポロニウム化水素 ポロニウム化水素水 H2Po ?
水分子の極性構造と結合角を示す模式図
水分子の極性構造と結合角を示す模式図
硫化水素分子の結合状態を示す模式図
硫化水素分子の結合状態を示す模式図
セレン化水素の構造解析モデル
セレン化水素の構造解析モデル
テルル化水素の電子状態モデル
テルル化水素の電子状態モデル
ポロニウム化水素の理論予測構造モデル
ポロニウム化水素の理論予測構造モデル

2つのカルコゲンを含む二水素化合物

二カルコゲン化二水素の結合形態を示すイラスト
二カルコゲン化二水素の結合形態を示すイラスト

2つのカルコゲン原子を含む二水素化合物は、化学式H2X2で表される。これらの物質は一般に不安定であり、対応する二カルコゲン分子とカルコゲン化二水素へと分解しやすい性質を持つ。例えば過酸化水素の分解反応は次のように表される。

2 H2O2 → 2 H2O + O2

過酸化水素の分子構造および立体配置のモデル
過酸化水素の分子構造および立体配置のモデル

こうした化合物のなかで最も重要な物質が過酸化水素(H2O2)である。過酸化水素は薄い水色を帯びたほぼ無色の液体であり、水と比較して揮発性が低い一方で、密度や粘性は水よりも高い。多様なpH環境において酸化剤としても還元剤としても機能し、過酸化金属錯体やペルオキシ酸錯体を形成するほか、タンパク質の酸塩基反応にも関与する。低濃度のものは家庭での消毒剤や毛髪の漂白などに用いられるが、高濃度品は危険性が高い。

二硫化水素の分子構造モデル
二硫化水素の分子構造モデル
二セレン化水素の分子形状を表すモデル
二セレン化水素の分子形状を表すモデル
テルル化水素二量体の気相構造モデル
テルル化水素二量体の気相構造モデル
化合物 化学式 融点(°C) 沸点(°C)
過酸化水素 H2O2 -0.43 150.2(分解)
二硫化水素 H2S2 -89.6 70.7
二セレン化水素 H2Se2 ? ?
テルル化水素 H2Te2 ? ?
標準生成エンタルピーの記号に関する数式グラフィック
標準生成エンタルピーの記号に関する数式グラフィック
カルコゲン化水素の物性値に関する補助データ図
カルコゲン化水素の物性値に関する補助データ図
各化合物の解離定数を示す関連図表
各化合物の解離定数を示す関連図表
分子間相互作用を示す模式図
分子間相互作用を示す模式図
水素化合物の熱力学特性を示すグラフ
水素化合物の熱力学特性を示すグラフ
二カルコゲン化合物の安定性に関する実験解析図
二カルコゲン化合物の安定性に関する実験解析図

よくある質問

カルコゲン化水素とはどのような化合物ですか?
酸素、硫黄、セレン、テルル、ポロニウムなどの酸素族元素(カルコゲン)と水素が結合した二元的化合物の総称です。
カルコゲン化二水素の分子構造はどのような形をしていますか?
化学式H2Xで表されるカルコゲン化二水素は三原子分子であり、折れ線形の分子構造と極性を持ちます。
過酸化水素にはどのような特徴がありますか?
過酸化水素はH2O2の化学式を持つ二カルコゲン化二水素であり、水色のほぼ無色の液体で、酸化剤や還元剤として多様な化学反応に関与します。

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参考文献

  1. CIA – The world factbook. Central Intelligence Agency. 2016年8月18日閲覧。
  2. About the International Decade for Action 'Water for Life' 2005-2015. 2017年6月28日閲覧。
  3. Greenwood and Earnshaw, pp. 766–7.
  4. Sumathi, K.; Balasubramanian, K. (1990). “Electronic states and potential energy surfaces of H2Te, H2Po, and their positive ions”. Journal of Chemical Physics 92 (11): 6604–6619.
  5. Goldbach, Andreas; et al. (2000). “Oxidation of Aqueous Polyselenide Solutions. A Mechanistic Pulse Radiolysis Study”. J. Phys. Chem. A 104 (17): 4011–4016.
  6. Hop, Cornelis E. C. A.; Medina, Marco A. (1994). “H2Te2 Is Stable in the Gas Phase”. Journal of the American Chemical Society 1994 (116): 3163–4.