化学
化学における多形現象の基礎と歴史
化学物質が同一の組成でありながら異なる結晶形をとる多形(同質異像)現象について、その歴史や命名法、関連分野を解説します。
📌 主なポイント
- ✓多形(同質異像)とは、同一の化学組成を持つ物質が複数の異なる結晶形を取る現象である。
- ✓有機化学において、最初に多形の存在を確認したのはフリードリヒ・ヴェーラーとユストゥス・フォン・リービッヒである(1832年)。
- ✓結晶形は生成時の温度、圧力、溶媒、生成速度などの条件に依存して変化する。
化学、物質科学、材料科学において、多形(たけい、英: polymorphism)とは、ある化学物質が同一の化学組成であるにもかかわらず、複数の異なる結晶形を取る現象のことを指します。同質異像(どうしついぞう)とも呼ばれ、医薬品、農薬、色素、染料、食品、爆薬などの有機化学や無機化学の分野において重要な意味を持つ現象です。
多形の命名と分類
多形を示す物質のそれぞれの結晶形を区別するため、学術や産業の分野では様々な命名法や表記法が用いられています。
- 米国や英国では低温相をα、高温相をβとする表記が使われる一方で、ドイツでは逆になる例も見られます。
- ローマ数字を用いてI、II、IIIと表示する方法があります。
- 転移温度を組み合わせて、α‐石英からβ石英への転移温度573℃にちなんだ「quartz-573」のように表すことがあります。
- 「低温型石英(Low Quartz)」や「高温型石英(high quartz)」のように、状態を明示する表現も用いられます。
結晶化の条件
ある物質がどのような多形(結晶形)をとるかは、結晶が生成されるときの環境条件に大きく依存します。主な要因としては、温度、圧力、溶媒の種類、および結晶化の速度などが挙げられます。
歴史的背景
有機化学の分野において、多形の存在が最初に確認されたのは1832年のことです。フリードリヒ・ヴェーラーとユストゥス・フォン・リービッヒがベンズアミドの沸騰溶液を観察していた際に見出しました。溶液の冷却を始めると、最初はすべすべした針状結晶として結晶化しますが、時間が経過するにつれて徐々に菱形結晶へと変化していきました。今日では、ベンズアミドの結晶は3種類の多形を持つことが知られており、彼らが当時確認したのは斜方晶系から単斜晶系への変化でした。
よくある質問
多形とは何ですか?
同一の化学組成を持つ化学物質が、複数の異なる結晶形を取る現象のことです。同質異像とも呼ばれます。
多形はどのような分野に関連していますか?
医薬品、農薬、色素、染料、食品、爆薬などの有機化学および無機化学の分野に関連しています。
化学における多形を最初に確認したのは誰ですか?
1832年にベンズアミドの溶液を観察していたフリードリヒ・ヴェーラーとユストゥス・フォン・リービッヒらです。
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参考文献
広田穣 (1965) "有機化合物の多形" 有機合成化学協会誌 23(2): 99-116. doi:10.5059/yukigoseikyokaishi.23.99 / 岩石学辞典:多形(コトバンク) / F. Wöhler, J. Liebig, "Untersuchungen über das Radikal der Benzoesäure." Ann. Pharm. 1832, 3, p.249–282. doi:10.1002/jlac.18320030302