知事の歴史的由来と各国の制度概要
📌 主なポイント
- ✓知事という言葉の語源は、仏教寺院の雑務をつかさどる役職に由来する。
- ✓日本では都道府県の首長を都道府県知事と呼び、選挙によって選出される。
- ✓アメリカ合衆国の州知事は州憲法に基づき直接選挙で選ばれる。
知事(ちじ)とは、地方行政区画を統轄する官庁の長を指す役職名である。英語では「governor」と訳されるのが一般的であるが、古代ローマの属州やイギリスの海外領土における「governor」は「総督」と訳される場合もある。
語源
「知事」という漢字語彙は、中国において地方行政官庁の長を指す官職として使われるようになる以前に、仏教寺院で雑事や庶務をつかさどる役職名として用いられていた歴史を持つ。仏教が中国に伝来した際、インドの僧院におけるサンスクリットの「カルマ・ダーナ」(karma-dāna)という役職に対してさまざまな漢訳語が当てられた。その中に「知院事」や「知事」が含まれていた。「知」はつかさどることを意味し、「知院事」で僧院の事務をつかさどる役職を指し、「知事」はその省略形とされる。
唐代に禅宗が発展すると寺院の運営業務も複雑化し、分掌が行われて「六知事」と呼ばれる総称が生まれた。その後、宋代になると官僚制度の用語としても用いられるようになり、地方の府・州・県の長官を「知某州事」「知某県事」などと呼ぶようになった。
日本における知事
日本では、広域自治体である都道府県の首長を都道府県知事(都知事、道知事、府知事、県知事)と呼ぶ。これに対し、基礎自治体である市町村の首長は市町村長と称される。
明治維新の過程で地方行政単位の名称に中国の制度が参考にされ、行政の長として「知事」の呼称が導入された。太平洋戦争前は内務省管轄の勅任官であったが、現在では住民の選挙によって選出されている。
各国における知事の制度
アメリカ合衆国
アメリカ合衆国の州(state)の首長である「governor」は州知事と訳される。大統領をモデルとした役職であり直接選挙で公選されるが、州憲法の定めによりその権限や組織には州ごとの差が見られる。
中国
中国では各省の省長が知事にあたる役職とされるが、省内の政治における序列では同省の共産党委員会書記に次ぐ位置づけとなっている。
インド
インドでは大統領が州知事を任命する仕組みとなっており、州知事が州首相を任命する。行政における実質的な権限は州首相が保持している。
韓国
韓国の広域自治団体である「道」の首長は「道知事」と呼ばれている。特別市や広域市の首長は「市長」と称される。
副知事
副知事は、一般に知事を補佐または代行する役職である。日本の都道府県には知事に対して副知事が置かれるほか、英語圏の「lieutenant governor」なども文脈に応じて副知事と訳される。