自然地理・植物

竹林の生態的特徴と日本の環境における歴史的・防災的側面

竹林の生態的特徴と日本の環境における歴史的・防災的側面
竹林の生態的特徴や日本における歴史的変遷、防災機能、さらに放置竹林による課題や対策について詳細に解説する百科事典記事。

📌 主なポイント

  • 2019年時点における日本の竹林総面積は約16万7000ヘクタールである。
  • 日本の竹林の大部分は中国大陸原産であり、マダケ類などは歴史的に移入されたものと考えられている。
  • 京都府八幡市の石清水八幡宮境内の竹林のマダケは、1882年にエジソンが白熱電球のフィラメントとして使用したことで知られる。

竹林(ちくりん)は、竹によって構成された林であり、竹藪(たけやぶ)とも称される。地下茎が横に這い、地上へ茎を伸ばす性質を持つため、多くの場合ほぼ単独種からなる群落を形成する。

モウソウチク(江南竹) の竹林
モウソウチク(江南竹) の竹林

生態的特徴と生物相

竹は一般的な樹木とは異なり、肥大成長をせず、両手に収まる程度の太さの茎が一面に並ぶ独自の景観を作り出す。繁殖力が強く成長が速いため地表への日光を遮り、他の植物が生えにくい環境を生み出す。林床には竹の葉が一面に広がるが、通常の樹木の葉のように黒っぽくならないため、林内全体がほの明るい印象となる。

また、竹林は特有の生物相を持つことでも知られ、腐生植物のラン科(ヤツシロランなど)やキノコ類のキヌガサタケなどが生育する。一方で、他の植物や草木の生育を妨げる傾向がある。

化野念仏寺 の竹林
化野念仏寺 の竹林

日本における歴史的変遷

林野庁の統計によると、2019年時点における日本の竹林総面積は約16万7000ヘクタールであり、2017年までの10年間で約8000ヘクタール増加している。日本国内の竹の大部分は中国大陸原産と考えられており、日本古来の植生ではない。『古事記』や『万葉集』などの古文書にも竹の記述が登場するが、当時はチシマザサ類を指すことが多く、現代で見られるようなマダケを中心とした竹林は、その後の中国大陸からの持ち込みや栽培に由来すると考えられている。

嵯峨野竹林 の小径
嵯峨野竹林 の小径

マダケ類は8世紀頃に持ち込まれ、当時は貴族の儀礼等に関連していたが、日本で一般に広く見られるようになったのは16世紀以降とされる。その後、竹は建築資材や竹細工、家具、釣竿などの天然素材として多用され、特に大分県などでは歴史的に竹工芸が盛んである。

ライトアップされた竹林( 高台寺 )
ライトアップされた竹林( 高台寺 )

また、京都府八幡市の石清水八幡宮境内の竹林のマダケは、1882年にトーマス・エジソンが白熱電球のフィラメントとして利用したことで知られており、境内には記念碑が建てられている。文化的にも、日本の庭園要素や水墨画のモチーフとして親しまれてきたほか、風が通り抜ける際の音は「残したい日本の音風景100選」に選ばれている。

防災機能と研究

竹林の防災機能に関しては、災害の種類や条件によって評価が異なる。土砂崩れへの影響については従来の研究に加え、2017年に宮城昭博と三好岩生による斜面安定に関する数式モデルが発表されるなど、根の力学的効果についての検証が進められている。一方で、ホウライチクのように直根型で垂直に深く根を張る種が斜面崩壊を防止する知見もあるなど、種ごとの特性の違いも指摘されている。

また、保水力に関しては、拡大竹林において竹の根が増加することで土壌の保水性が低下する可能性が指摘されるなど、水源涵養機能への影響についての研究が行われている。

荒れた竹林
荒れた竹林

放置竹林の課題と対策

現代では、プラスチック等の代替素材の普及や外国産資材の輸入、地方の過疎化・高齢化に伴い、資源としての竹の利用が減少し、適正に管理されない放置竹林が問題となっている。放置された竹林は生物多様性の低下や防災上の懸念につながるため、竹を伐採して樹木へ植え替えたり、竹炭や竹紙、バイオマス発電の燃料などに加工・利用する取り組みが各地で行われている。

よくある質問

日本の竹林はもともと日本にあったものですか?
日本で一般に見られる竹の大部分は中国大陸原産と考えられており、日本古来の植生ではなく、歴史的経緯を経て持ち込まれ栽培されたものが中心です。
放置竹林が増えている原因は何ですか?
プラスチックなどの代替素材の普及、外国産の安い竹材や筍の輸入、および地方の過疎化や高齢化による資源利用の減少が主な原因です。
エジソンと日本の竹林にはどのような関係がありますか?
京都府八幡市の石清水八幡宮境内の竹林のマダケが、1882年にトーマス・エジソンによって白熱電球のフィラメントとして採用されました。

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参考文献

  • 「荒れる竹林 迫る地滑り/過疎化で放置 急拡大」『読売新聞』夕刊2019年1月10日(社会面)。
  • 宮城 昭博, 三好 岩生「斜面安定に対する竹林地下部の力学的効果」『砂防学会誌』第70巻 1号、2017年、3-9頁。
  • 上田弘一郎『竹と日本人』日本放送出版協会〈NHKブックス〉、1979年。
  • 藤原洋一ほか「竹林拡大が土壌物理性および積雪・融雪に及ぼす影響」『農業農村工学会論文集』第84巻第3号、2016年、II_87-II_94。