地形学
海食崖の地形学的特徴と形成プロセス

海食崖(かいしょくがい)の定義、形成プロセス、後退速度、および地形学的意義について解説します。波浪による侵食がどのように急崖を形成するのかを詳述。
📌 主なポイント
- ✓海食崖は主に波浪による侵食で形成される急崖である。
- ✓後退プロセスには風化、基部の洗掘、斜面崩壊などが複合的に関与する。
- ✓後退速度は岩質や波の強度、前面地形により異なり、プランジング崖では極めて遅い。
海食崖(かいしょくがい、英語: coastal cliff)とは、海に面する山地、丘陵地、台地などが、主に波浪の侵食作用を受けて形成された急崖、または急斜面を指す地形です。別名として「波食崖」や「海崖」とも呼ばれます。

形成と後退のプロセス
海食崖の形成および陸側への後退は、単一の要因ではなく、複数の現象が複合的に作用して進行します。主な要因には以下のプロセスが含まれます。
- 物理的・化学的風化:崖面内部の亀裂が発達し、岩盤が脆弱化する。
- 波浪による侵食:崖の基部が波によって洗掘され、不安定化する。
- 斜面崩壊:地震や重力の影響により、崖の一部が崩落する。
崖の基部が侵食されると「波食窪(はしょくくぼ)」が形成されます。この窪みが拡大することで崖の支持力が失われ、崩落が繰り返されることで海食崖は陸側へと後退していきます。また、この過程で崖の前面には「ショアプラットフォーム(shore platform)」と呼ばれる平坦な地形が形成されます。
後退速度
海食崖の後退速度は、地形を構成する岩質、波の強度、および崖前面の地形条件によって大きく異なります。研究によれば、海食台海岸では年間0.2メートルから1.5メートル程度の後退が見られる一方、波食棚海岸では平均で年間0.03メートル程度とされています。一方で、プランジング崖(崖の直下まで深い水深がある崖)の後退速度は極めて遅く、ゼロに近い値を示すことが報告されています。
地形学的意義とジオパーク
海食崖は、その急峻な地形から風光明媚な景観を形成するだけでなく、崖面に地層が露出するため、地質学的な観察対象としても重要です。そのため、山陰海岸ユネスコジオパークをはじめとする各地のジオパークにおいて、重要なジオサイトとして選定・活用されています。
よくある質問
海食崖はどのようにして後退するのですか?
主に波浪による基部の洗掘と、それに伴う崖面の崩落によって陸側へ後退します。また、風化による岩盤の脆弱化も重要な要因です。
海食崖の後退速度はどのくらいですか?
地形や岩質により異なります。海食台海岸では年間0.2〜1.5メートル程度ですが、波食棚海岸では平均0.03メートル程度、プランジング崖ではほぼゼロに近いとされています。
ショアプラットフォームとは何ですか?
海食崖の基部が侵食され、後退する過程で崖の前面に形成される平坦な地形のことです。
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参考文献
- 砂村継夫「岩石海岸」『自然地理学事典』朝倉書店、2017年、276-277頁。
- 日本地形学連合編『地形の辞典』朝倉書店、2017年、73頁。
- 青木久「波食棚の形成をもたらす海食崖の後退プロセス」『地学雑誌』第126巻第4号、2017年、413-424頁。
- 松倉公憲『地形学』朝倉書店、2021年、208-212頁。
- 山陰海岸ジオパーク推進協議会「山陰海岸ジオパークで遊ぶ」