地球科学・土木工学

海岸における侵食現象とそのメカニズム

海岸における侵食現象とそのメカニズム
海岸侵食の原因、砂浜や海岸線への影響、沿岸漂砂や土砂供給の減少、および防護対策や総合土砂管理の取り組みについて解説します。

📌 主なポイント

  • 海岸侵食とは、定着堆積する土砂量が流出する土砂量を下回り、海岸から土砂が減少して汀線が後退する現象である。
  • 主な原因として、ダム建設等に伴う河川からの土砂供給量の減少が挙げられる。
  • 沿岸域では沿岸流と波浪によって沿岸漂砂が発生し、汀線の変化は拡散方程式によって記述される。

海岸侵食(かいがんしんしょく)とは、主に砂浜海岸において、定着堆積する土砂量が流出する土砂量を下回り、結果的に海岸から土砂が減少し汀線が後退する現象を指す。広義には、汀線後退だけでなく海底勾配が急傾斜化する現象も含まれる。

消波ブロックを使用した海岸保護(離岸堤)
消波ブロックを使用した海岸保護(離岸堤)

概要と発生要因

海岸は侵食と堆積の均衡によって維持形成されているため、侵食が堆積を超過する状態が継続することによって総体としての侵食が生じる。気象の変化による波向きや風向きの変化、温暖化に伴う海面上昇、河川における砂利採取などが要因として挙げられる。中でも大きな原因の一つとして、河川にダム等の構造物が建設されたことに伴う、河川から海岸へ流れ込む土砂の絶対量の減少がある。

また、港湾や突堤の建設によって砂の移動の連続性が断たれ、その上手側で砂が堰き止められて堆積し、下手側では砂の供給不足により侵食が発生することもある。

雁木による護岸
雁木による護岸

沿岸漂砂と土砂の移動

沿岸域には汀線に平行な沿岸流が生じており、この流れと汀線に斜めに入射する波によって沿岸漂砂が発生する。漂砂の移動する領域はおおよそ水深約20mが限界と考えられてきたが、海底で発生する重力流などの流れが加わる場合もある。

基準点からの汀線距離を表す数式変数
基準点からの汀線距離を表す数式変数

汀線の変化は、基準点から汀線までの距離を $x_s$、x軸に直角にy軸をとったとき、以下の拡散方程式で記述される。

汀線の変化を表す拡散方程式
汀線の変化を表す拡散方程式

対策と総合土砂管理

海岸侵食に対する対策としては、突堤やヘッドランドを建設して堆砂を促す手法と、ダムの運用や工法の工夫により河川からの土砂供給量を増加させる手法に大別される。砂防ダムにおいて粒径の小さな砂利を下流へ流すスリット型ダムを採用するなど、山から川、海岸に至る自然の土砂の流れを極力妨げない「総合土砂管理」という取り組みが進められている。

よくある質問

海岸侵食の主な原因は何ですか?
河川へのダム建設等による土砂供給量の減少や、港湾・突堤の建設による砂の移動の遮断が主な原因として挙げられます。
沿岸漂砂とは何ですか?
汀線に平行な沿岸流と、汀線に斜めに入射する波によって引き起こされる、砂が移動する現象のことです。
海岸侵食に対する対策にはどのようなものがありますか?
突堤やヘッドランドの建設による堆砂の促進や、スリット型砂防ダムの導入などによる河川からの土砂供給量維持を図る総合土砂管理などがあります。

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参考文献

国土交通省「海岸の現状と課題」(https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/kaigan_hozen/01/pdf/s02-2.pdf)