心理学
認知心理学:精神過程の科学的研究

認知心理学の定義、歴史、注意や記憶といった主要な認知過程について解説します。行動主義からの転換と認知革命の背景を詳述します。
📌 主なポイント
- ✓認知心理学は1960年代に、行動主義に対する批判と情報処理モデルの導入から発展した。
- ✓ウルリック・ナイサーが1967年に出版した『Cognitive Psychology』が、分野の名称を一般化させた。
- ✓注意は意識的な情報選択の過程であり、内因性制御と外因性制御の二つのシステムに分類される。
- ✓ワーキングメモリは、情報を一時的に保持しつつ処理を行う重要な認知機能である。
認知心理学(にんちしんりがく、英語: cognitive psychology)とは、注意、言語使用、記憶、知覚、問題解決、創造性、論理的思考といった精神過程を対象とする科学的研究分野です。人間の行動を、情報処理のモデルを用いて解明しようとするアプローチが特徴です。
歴史的背景と認知革命
認知心理学は、1960年代にそれまでの主流であった行動主義からの分離によって確立されました。行動主義は、観察不可能な精神過程を実証科学の対象外と見なしていましたが、言語学やサイバネティックス、応用心理学の発展により、人間の行動を説明するために精神処理のモデルを導入する必要性が高まりました。
20世紀半ば、以下の4つの要因が「認知革命」を後押ししました。
- 軍事技術の発展:第二次世界大戦中、ストレス下での注意や新しい技術の習得に関する研究が求められ、情報理論が心理学に統合されました。
- コンピュータ科学の台頭:人間の思考とコンピュータの計算機能の類似性が注目され、記憶の保存や検索といった精神機能のモデル化が進みました。
- 行動主義への批判:ノーム・チョムスキーらによる経験論への批判が、精神過程を重視する新しい潮流を生みました。
- 研究機関の設立:1960年のハーバード認知研究センター設立など、学問分野としての制度化が進みました。
1967年、ウルリック・ナイサーが著書『Cognitive Psychology』を出版し、この用語が広く定着しました。
主要な認知過程
認知心理学者は、行動に影響を与える精神過程を詳細に分析します。特に記憶と注意は中心的な研究対象です。
注意
注意とは、利用可能な感覚情報の中から特定の情報に意識を向ける状態を指します。脳は膨大な入力を同時に処理できないため、注意過程を通じて重要な情報を選択し、フィルタリングを行います。これには、意図的な「内因性制御」と、反射的な「外因性制御」の二つのシステムが関与しています。
記憶
記憶は、感覚記憶、短期記憶(ワーキングメモリ)、長期記憶の段階に分類されます。特にワーキングメモリは、単なる一時的な保持だけでなく、複雑な日常活動において情報を処理・操作する能力として重要視されています。バドリーとヒッチが提唱したワーキングメモリモデルは、視覚的・聴覚的刺激と長期記憶を統合する中央プロセッサーの存在を仮定しており、現代の認知心理学において広く支持されています。
よくある質問
認知心理学と行動主義の主な違いは何ですか?
行動主義は観察可能な行動のみを研究対象としますが、認知心理学は観察不可能な精神過程(思考、記憶、注意など)を情報処理のモデルを用いて科学的に研究します。
ワーキングメモリとは何ですか?
ワーキングメモリは、情報を一時的に保持しながら、同時にその情報を操作・処理する能力を指します。日常的な学習や問題解決において不可欠な機能です。
認知革命とは何ですか?
20世紀半ばに、心理学の主流が行動主義から、精神過程を重視する認知主義へと移行した歴史的な転換を指します。
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参考文献
- Anderson, J.R. (2010). Cognitive Psychology and Its Implications. New York: Worth Publishers.
- Neisser, U. (1967). Cognitive Psychology. Englewood Cliffs, NJ: Prentice Hall.
- Mandler, G. (2002). Origins of the cognitive (r)evolution. Journal of the History of the Behavioral Sciences, 38, 339–353.
- Cowan, N. (2013). Working Memory Underpins Cognitive Development, Learning, and Education. Educational Psychology Review, 26(2), 197–223.