コロイドの基礎と物理化学的性質

📌 主なポイント
- ✓コロイドは分散相と分散媒の組合せからなる物質状態である。
- ✓コロイド分散系の安定性はDLVO理論によって説明される。
- ✓コロイド化学の分野は1861年にトーマス・グレアムによって創始された。
コロイド(英: colloid、膠質)あるいはコロイド分散体(英: colloidal dispersion)とは、一方の物質が微小な液滴あるいは微粒子(分散相)として、もう一方の物質(分散媒)の中に分散している状態の物質のことである。分散媒は気体、液体、固体のいずれもあり得る。
概要と分類
コロイドは一般的な分散系とは異なる特有の性質を示す。例えば、光の照射を受けるとチンダル現象によって光が散乱され、分散質が発色や光の散乱を引き起こす。

分散媒が液体の場合はコロイド溶液とも呼ばれ、具体的にはフォーム、エマルション、ゲル、サスペンションなどがこれに該当する。また、永続的な2つの相から形成される相コロイドのほか、巨大分子自身が分散相となって分散媒に分散している分子コロイドが存在する。身近な例としては、牛乳やバター、クリーム、霧、煙、インク、塗料、糊などが挙げられる。

安定化メカニズムとDLVO理論
分散質であるコロイド粒子は、分子間力の総和である粒子間ファンデルワールス力引力を有している。同時に、粒子表面の組成や溶媒との極性差に起因する電位差が存在し、逆符号の対イオンによる拡散電気二重層が形成される。粒子が接近した際には二重層が重なり合い、イオン拡散に由来するエントロピー効果によって浸透圧斥力が生じることで粒子の凝集が妨げられ、分散系が安定化する。これがDLVO理論(デリャーギン・ランダウ・フェルウェー・オーバービーク理論)の基礎である。
一方で、分散系にイオン性物質を加えると、バルク溶媒のイオン濃度上昇に伴って電気二重層のイオン濃度が相対的に低下し、浸透圧斥力が弱まる。その結果、ファンデルワールス力による凝集力が優位になり、凝固物が生成される。また、一般に温度を上げるとイオンや溶媒の分子運動が活発化し、電気二重層の幅や電位差が増すことで斥力項が大きくなり、分散系の安定性は増加する傾向にある。
親水コロイドと保護コロイド
水を分散媒とする分散コロイドのうち、電解質の投入によって沈殿しやすいものを疎水コロイド、沈殿しにくいものを親水コロイドと呼び分ける場合がある。親水コロイドは表面電荷を持つだけでなく、水和による多数の水分子配位に基づく立体斥力によって強く反発し、安定性を保っている。
また、親水コロイドが疎水コロイドを取り囲んで凝析を防ぐ状態を保護コロイドと呼ぶ。保護コロイドの代表例としては以下のものが挙げられる。
- 墨汁に使用されるにかわ(膠)
- 写真フィルムのゼラチン
- インクに加えるアラビアゴム
歴史的背景
コロイドに関する研究分野は、1861年にスコットランドの化学者であるトーマス・グレアムによって創始され、当初はコロイド化学と呼ばれていた。今日では界面化学の領域として発展している。