流体の対流現象における基礎理論と物理メカニズム

📌 主なポイント
- ✓対流とは、流体において温度や表面張力の不均質性が生じることで内部に流動が生じる現象である。
- ✓レーリー=ベナール型対流の発生や発達は、レーリー数とプラントル数という無次元の物理量によって決定される。
- ✓マランゴニ対流は、流体表面の表面張力の不均質性を原因として駆動される対流現象である。
対流(たいりゅう、英語: convection)とは、流体において温度や表面張力などの原因により不均質性が生ずるため、その内部で重力や表面張力によって引き起こされる流動が生ずる現象である。
伝熱工学における対流とは、流体が熱を運ぶ現象のことを指す。英語のconvectionはラテン語由来であり、(熱を)と一緒に運ぶという意味を持っている。日本語の表現である「対流」からは、上昇流と下降流のような向きが異なる流れが対になっているような印象を受けるが、伝熱工学の定義においては必ずしもその様な意味に限定されない。

鉛直対流
上層ほど密度の大きな流体が静力学的不安定となり、流体の運動が生ずる現象を鉛直対流と呼ぶ。温度変化による流体の密度変化が原因となる熱対流が最も一般的な例である。
熱対流の体系的な研究は、1900年にフランスのアンリ・ベナールによる実験から始まった。パラフィンや鯨油などの粘性の高い流体層の下面を一様に加熱すると、加熱された流体は浮力により上昇するため、流体内部に半定常的な細胞状の模様(対流セル)が形成されることがある。これをベナール・セルと呼ぶ。1916年にレーリー卿がその理論的な解析を行ったことから、細胞状のパターンが生ずる熱対流をレーリー=ベナール型対流と呼ぶ。


ブジネスク近似が成り立つ流体におけるレーリー=ベナール型対流は、無次元の物理量であるレーリー数(Ra)とプラントル数(Pr)によってその形状が決まる。対流が発生する最小のレーリー数は臨界レーリー数と呼ばれ、上下ともに固定境界の時は約1,708である。
水平対流
流体に水平方向の温度差が与えられた場合に生ずる流体の運動を水平対流と呼ぶ。地球大気においては、緯度による太陽放射の吸収量の違いから、熱帯から極への水平対流である大気大循環が生じている。これらは熱帯のハドレー循環、中緯度のフェレル循環、極の極循環に大きく分類される。
マランゴニ対流
マランゴニ対流とは、流体表面の表面張力が不均質になることが原因で流体の流れが駆動される対流である。名称はイタリアの物理学者カルロ・マランゴニにちなむ。マランゴニ対流が発生すると、表面張力の低い方から高い方へ流れが生じる。


マランゴニ対流の解析には、マランゴニ数(Ma)という無次元量が用いられる。半導体材料であるシリコンなどを溶融・再結晶させる過程においてマランゴニ対流が発生し、均質な単結晶の生成を困難にする要因として知られている。
強制対流
流体力学や伝熱工学の分野において、流体が熱を運ぶ現象としての対流のうち、自然発生するものを自然対流や自由対流と呼び、ブロアやポンプなどの外部要因によって引き起こされるものを強制対流と区別して呼ぶ。
よくある質問
対流とはどのような現象ですか?
レーリー=ベナール型対流とは何ですか?
マランゴニ対流は何が原因で発生しますか?
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参考文献
Hans-Jürgen Butt, Karlheinz Graf, Michael Kappl; 鈴木祥仁, 深尾浩次 共訳『界面の物理と科学』丸善出版、2016年、50頁。ISBN 978-4-621-30079-4。