気象学・情報システム

COSMETS:気象庁の気象資料総合システムの概要と歴史

気象庁の気象資料総合システム「COSMETS」の概要、ADESSとNAPSの構成、数値解析予報システムの歴史と歴代のスーパーコンピュータについて解説します。

📌 主なポイント

  • COSMETSは気象庁の気象資料総合システムの名称であり、ADESSとNAPSの2つの部分から構成される。
  • ADESSは気象観測データの自動編集中継を行い、2021年以降は「気象庁情報システム基盤」へ移行して運用されている。
  • NAPSは数値予報を行うスーパーコンピュータシステムであり、1959年の運用開始以来、世代交代を重ねて予測精度の向上に寄与している。
  • NAPSのコアシステムは、電力容量の制約により1992年以降は清瀬市の気象衛星センター内で運用されている。

COSMETS(コスメッツ、Computer System for Meteorological Services)とは、気象庁が運用する気象資料総合システムである。各種の気象観測データを収集・解析し、将来の気象を予測するための基幹システムとして機能している。

本システムは、主に気象観測データの自動編集中継を行うADESS(気象資料自動編集中継装置)と、大型計算機を用いて数値予報を行うNAPS(数値解析予報システム)の2つの主要な部分に分かれている。もともとは個別に運用されていたが、1980年代に統合されてCOSMETSという総称で呼ばれるようになった。

システムの構成要素

COSMETSは、気象業務の中枢を担うため、通信ネットワークやデータ中継機能、そして膨大な計算処理を行うスーパーコンピュータ群によって構成されている。

ADESS(気象資料自動編集中継装置)

日本全国の気象観測データの集配信や、世界気象機関(WMO)を通じた国際通信系(GTS)の中心としての役割を担う。当初は東芝製のメインフレームが使用されていたが、同社の撤退に伴い日本電気(NEC)製システムへ移行した。その後、2005年の更新ではC-ADESSとL-ADESSが一本化され、東西2つのシステムに再構成されるとともに、ベンダーも富士通へと切り替えられた。さらに2021年3月以降は、仮想化基盤である「気象庁情報システム基盤」へ全面移行し、運用管理の効率化が図られている。

NAPS(数値解析予報システム)

気象予測のための数値演算を行うスーパーコンピュータシステムである。1959年の運用開始以来、世代交代を重ねながら計算性能を向上させてきた。本庁舎の電力容量の制約から、コアシステムは1992年以降、清瀬市にある気象衛星センター内に移設されて運用されている。

数値解析予報システム(NAPS)の歴史と変遷

NAPSは、1959年のIBM 704による運用開始以降、日本の数値予報の精度向上を支えてきた。日立製作所製のスーパーコンピュータを中心に更新が続けられ、近年では富士通製のシステムも導入されている。

世代 運用開始 受注者 機種 理論最大性能
NAPS 1959年 IBM IBM 704 12 kFLOPS
NAPS2 1967年 日立製作所 Hitachi HITAC 5020 307 kFLOPS
NAPS3 1973年 日立製作所 Hitachi HITAC 8800 4.55 MFLOPS
NAPS4 1982年 日立製作所 Hitachi HITAC M-200H 23.8 MFLOPS
NAPS5 1987年 日立製作所 Hitachi HITAC S-810 630 MFLOPS
NAPS6 1996年 日立製作所 Hitachi S-3800 32 GFLOPS
NAPS7 2001年3月 日立製作所 Hitachi SR8000/E1 768 GFLOPS
NAPS8 2006年3月 日立製作所 Hitachi SR11000 21.5 TFLOPS
NAPS9 2012年6月 日立製作所 Hitachi SR16000/M1 847 TFLOPS
NAPS10 2018年6月 日立製作所 Cray XC50 18 PFLOPS
NAPS11 2023年〜2024年 富士通 PRIMEHPC FX1000 / PRIMERGY CX400 M7 -

近年の動向

2023年3月には、第11世代数値解析予報システム(NAPS11)の一環として、線状降水帯の発生を精緻に予測するためのスーパーコンピュータが稼動を開始した。さらに2024年3月には、台風や集中豪雨の予測精度向上に貢献する新たなスーパーコンピュータシステムが運用を開始している。

よくある質問

COSMETSとは何ですか?
気象庁が運用する気象資料総合システムのことで、観測データの収集・解析・予測を行う基幹システムです。
COSMETSはどのような構成になっていますか?
気象観測データを中継するADESS(気象資料自動編集中継装置)と、数値予報を行うNAPS(数値解析予報システム)に分かれています。
NAPSのコアシステムが清瀬市にあるのはなぜですか?
1992年のシステム更新の際、気象庁本庁舎の電力容量がシステムの必要電力に耐えられなくなったため、清瀬市にある気象衛星センター内に移設されました。

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参考文献

  • 「気象予測」を支える 日立グループのスーパーコンピュータ技術 日立評論 2009年12月号
  • 最新鋭スーパーコンピュータの導入について、気象庁
  • スーパーコンピュータの更新及び数値予報等の改善について、気象庁
  • 新しいスーパーコンピュータシステムの運用開始について、気象庁
  • 新しいスーパーコンピュータの運用を開始します、気象庁
  • 豪雨災害の要因となる線状降水帯の発生を精緻に予測する気象庁様の新スーパーコンピュータが稼動開始、富士通株式会社、2023年2月27日
  • 台風や集中豪雨の予測精度向上に貢献する気象庁様の新スーパーコンピュータが稼動開始、富士通株式会社、2024年2月21日