社会科学

文化:概念の変遷と学術的定義

文化の定義、語源、歴史的変遷、および人類学や社会学における学術的な概念について解説します。

📌 主なポイント

  • 文化の語源はラテン語の「colere(耕す)」に由来する。
  • エドワード・バーネット・タイラーは、文化を知識や習慣を含む複雑な総体と定義した。
  • 現代の人類学では、文化は固定的なものではなく、常に変容し続ける「生成」のプロセスとして捉えられる。

文化(ラテン語: cultura)は、人間が社会の構成員として獲得する振る舞いや知識、価値観の総体です。特定の社会組織や集団において共有される固有の様式を指し、成員はその文化を学習し、身体化することで社会に適応します。

語源と歴史的背景

文化」の語源は、ラテン語の「colere(耕す)」に由来する「cultura」です。これは本来、土地を耕すことや精神を培養することを意味していました。日本語の「文化」は、中国の『易経』にある「人文を観て以て天下を化成す」という言葉に由来し、明治時代以降、英語の「culture」やドイツ語の「Kultur」の訳語として定着しました。

学術的な定義

人類学における文化

人類学において文化は、人間と自然を区別する重要な概念です。エドワード・バーネット・タイラーは、文化を「知識、信仰、芸術、道徳、法律、慣習、その他人間が社会の成員として獲得したあらゆる能力や習慣を含む複雑な総体」と定義しました。現代では、言語を通じた象徴的コミュニケーションが文化の不可欠な条件として強調されています。

社会学における文化

社会学では、文化を社会システムを支える「知のストック」や「認識枠組」として捉えます。タモツ・シブタニは、特定の集団内で共有されるパースペクティブ(認識枠組)として文化を扱い、多文化的な社会状況を分析する概念として活用しています。

文化をめぐる議論

文化進化論と相対主義

19世紀には、文化が未開から文明へと単一の方向に進化するという「単系進化論」が提唱されましたが、これは後にフランツ・ボアズらによって批判されました。代わって、個々の文化には固有の価値があり、外部の基準で優劣を判断できないとする「文化相対主義」が現代の人類学における重要な視点となっています。

文化の「発明」と変容

現代の研究では、伝統的とみなされる文化が、政治的・社会的な文脈の中で比較的近年に「発明」されたものである可能性が指摘されています。また、グローバリゼーションや観光の影響により、文化は固定的なものではなく、常に外部の影響を取り込みながら生成・変容し続けるものとして捉えられています。

よくある質問

文化と教養の違いは何ですか?
歴史的に、文化は文明と対比される人間の精神的向上を指す言葉として「教養」と言い換えられることがありました。しかし、現代の人類学や社会学では、教養という個人的な洗練だけでなく、集団で共有される生活様式全般を指す広義の概念として扱われます。
動物に文化はありますか?
かつて文化は人間に固有のものと考えられてきましたが、野生動物の観察により、模倣による行動の伝達(伝統)が確認されています。ただし、人間のような言語や、蓄積を伴う高度な改良といった特徴は、人間以外の生物には認められないとされています。
文化相対主義とは何ですか?
文化相対主義とは、特定の文化を絶対的な基準とせず、それぞれの文化が持つ固有の文脈や価値を尊重し、客観的に理解しようとする立場のことです。

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文化人類学社会学文化相対主義グローバリゼーション

参考文献

  • E.B.タイラー『原始文化』誠信書房、1962年。
  • 祖父江孝男『文化人類学入門』中央公論社、1979年。
  • 渡辺靖『「文化」を捉え直す カルチュラル・セキュリティの発想』岩波新書、2015年。
  • 吉見俊哉『現代文化論 新しい人文知とはなにか』有斐閣、2018年。