シクロヘキサンの構造・性質と工業的利用

📌 主なポイント
- ✓シクロヘキサンは分子式 C6H12 で表されるシクロアルカンの一種である。
- ✓いす型立体配座において、置換基にはアキシアル位とエクアトリアル位が存在する。
- ✓工業的には主にベンゼンの接触水素添加によって生産され、ナイロンの原料として広く利用される。
シクロヘキサン(cyclohexane)は、分子式C6H12、分子量84.16のシクロアルカンの一種に分類される有機化合物です[1]。常温常圧では無色の液体で、ガソリンのような甘い匂いと揮発性を持ちます。ベンゼンの接触水素添加によって工業的に生産されることが多く、極性溶媒には溶けにくいものの、ジエチルエーテルやエタノール、アセトンなどの有機溶媒にはよく溶けます。また、シクロヘキサンから水素原子を1個取り除いた1価のアルキル基はシクロヘキシル基と呼ばれ、しばしばCyと略記されます。


シクロヘキサン環の立体配座
シクロヘキサン環には、いす形、舟形、半いす形、ねじれ舟形といった複数の立体配座が存在します。中でも「いす形」の配座が最も安定しており、通常の環境下で好ましく存在します。ただし、置換基が導入された誘導体の場合、置換基のかさ高さ(立体障害)によっては他の配座が安定する場合もあります。



アキシアルとエクアトリアル
いす型立体配座において、結合している置換基は環平面に対して垂直方向に向く「アキシアル(axial)」と、平行方向に向く「エクアトリアル(equatorial)」に大別されます。環を形成する結合軸の自由回転に伴い、ふね型立体配座を経由して2つのいす型が入れ替わる現象を「環反転」と呼びます。この反転により、アキシアルにあった置換基はエクアトリアルへと向きを変えます。かさ高い置換基の場合、アキシアル配置では立体障害が生じやすいため、これを避けてエクアトリアル配置をとる方が熱力学的に有利となります。

製法と工業的利用
シクロヘキサンの大部分は、ベンゼンにニッケルやパラジウムなどの触媒を用いて接触水素添加を行うことで工業的に製造されます。また、石油精製の過程で生じるメチルシクロペンタンを触媒で異性化・転化して得る方法もあります。生産されたシクロヘキサンの多くはシクロヘキサノンやシクロヘキサノールへと変換され、最終的にアジピン酸やε-カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミンなどの原料を経由して、6-ナイロンや6,6-ナイロンといったポリアミド樹脂の生産に利用されます。さらに、有機溶媒として洗浄液や接着剤の成分としても用いられます。

安全性と取り扱い
シクロヘキサンは可燃性の高い液体であり、日本の消防法では第4類危険物第1石油類に分類されます。麻酔作用や神経系への影響があり、高濃度で吸引すると意識障害を招くおそれがあります。また、低濃度では臭いが感じにくい場合があるため注意が必要です。皮膚に長期間接触すると皮膚炎を引き起こすリスクがあります。
よくある質問
シクロヘキサンの最も安定な立体配座は何ですか?
アキシアルとエクアトリアルの違いは何ですか?
シクロヘキサンはどのような用途に使われますか?
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参考文献
- Front Matter, Nomenclature of Organic Chemistry : IUPAC Recommendations and Preferred Names 2013 (Blue Book), The Royal Society of Chemistry, 2014.
- NIOSH Pocket Guide to Chemical Hazards - Cyclohexane.
- 経済産業省生産動態統計年報 化学工業統計編.