日本文学

大菩薩峠 (小説)

中里介山による長編時代小説『大菩薩峠』の解説。幕末を舞台に虚無的な剣士・机竜之助の遍歴を描く、日本文学史上重要な未完の巨編。

📌 主なポイント

  • 中里介山による長編時代小説であり、1913年から1941年まで連載された。
  • 主人公の机竜之助が幕末の日本各地を彷徨う遍歴を描いた未完の巨編である。
  • 大衆文学の先駆けとして、当時の文壇から高く評価された。

『大菩薩峠』(だいぼさつとうげ)は、中里介山による長編時代小説である。1913年から1941年にかけて『都新聞』『毎日新聞』『読売新聞』などで断続的に連載された。全41巻に及ぶ壮大な物語であるが、作者の死により未完のままとなっている。

概要

本作は幕末を舞台に、虚無にとりつかれた剣士・机竜之助を主人公とする。甲州大菩薩峠での辻斬りを皮切りに、竜之助の流転の旅と、彼を取り巻く多様な人物たちの生き様が描かれる。中里自身は本作を「大乗小説」と称し、仏教思想を背景に人間の業を追求しようと試みた。大衆小説の先駆けとして、当時の文壇や知識層からも高く評価された。

物語の展開

物語は安政5年、甲州の大菩薩峠で竜之助が老巡礼を理由なく斬殺する場面から始まる。その後、竜之助は甲源一刀流の師範・宇津木文之丞を試合で惨殺し、文之丞の妻・お浜を連れて江戸へ出奔する。物語は、竜之助を仇と狙う文之丞の弟・宇津木兵馬の追跡や、新選組との関わり、そして日本各地を彷徨う竜之助の姿を詳細に追う。連載が進むにつれ、物語は単なる仇討ちの枠を超え、群像劇としての側面を強めていった。

評価と影響

連載当時、菊池寛、谷崎潤一郎、泉鏡花、芥川龍之介といった著名な作家たちが本作を賞賛した。文学研究者の間では、本作を大衆文学の母胎と位置付ける見方が一般的である。また、戦後においても安岡章太郎をはじめとする多くの作家や研究者によって、その文学的価値や構造についての論考が重ねられている。

よくある質問

『大菩薩峠』は完結していますか?
いいえ、作者の中里介山の死により未完のままとなっています。
主人公の机竜之助はどのような人物ですか?
「音無しの構え」で知られる名うての剣客ですが、虚無にとりつかれ、理由なき辻斬りを繰り返す人物として描かれています。
本作はいつ頃執筆されましたか?
1913年から1941年にかけて、約30年間にわたり新聞連載されました。

関連記事

中里介山時代小説大衆文学幕末

参考文献

  • 【旅を旅して】大菩薩峠(山梨県甲州市、小菅村)『読売新聞』日曜朝刊別刷り「よみほっと」2022年10月2日1面