医学

脱水症の病態と医学的対応

脱水症の病態と医学的対応
医学における脱水症の定義、原因、病態、および適切な水分・電解質補給の重要性について解説します。

📌 主なポイント

  • 脱水症は、体内の水分摂取量が喪失量を下回ることで発生する。
  • 毛細血管再充満時間が2秒以上かかる場合、脱水による循環血液量減少の可能性がある。
  • 治療の基本は水分と電解質の補給であり、重症度に応じて経口補水液や輸液が選択される。
  • 腎機能障害がある場合、カリウム補給には高カリウム血症のリスクが伴うため注意が必要である。

医学における脱水症(だっすいしょう、英: dehydration)とは、体内の水分量が不足し、生理的な恒常性が維持できなくなった状態を指します。医学的には、細胞外液(血漿および間質液)のみが減少する「volume depletion」と、細胞外液と細胞内液の双方が減少する「dehydration」という概念がありますが、臨床現場ではこれらを総称して脱水症と呼びます。

脱水症状を示す患者への経口補水
脱水症状を起こした患者への経口補水液による処置

原因とメカニズム

脱水症は、水分の摂取量が喪失量を下回ることで発生します。原因は大きく分けて「摂取不足」と「過剰喪失」の二つに分類されますが、実際にはこれらが複合的に関与することが一般的です。発汗、嘔吐、下痢、多尿、あるいは不感蒸泄の増加などが主な喪失経路となります。

臨床的評価

患者の脱水状態を評価する簡易的な指標として、毛細血管再充満時間(CRT)が用いられます。指の爪を5秒間圧迫し、白くなった部位がピンク色に戻るまでの時間を計測します。一般的に、この時間が2秒以上かかる場合は、循環血液量の減少を示唆する所見と判断されます。

治療と管理

脱水症の治療は、不足した水分および電解質の補給が基本です。軽症で経口摂取が可能な場合は、経口補水液(ORS)を用いた補給が行われます。小児の軽症胃腸炎においては、特定の条件下で希釈したリンゴジュースが治療の選択肢となることも報告されています。

高度脱水や腎機能障害を伴う場合は、医療機関での輸液療法が必要です。特に腎機能が低下している状況では、カリウムの排泄が困難となり高カリウム血症を招くリスクがあるため、輸液の成分や投与速度は慎重に管理されます。原則として、まずはナトリウムを中心とした細胞外液補充液を投与し、十分な排尿を確認した後にカリウムの補給を検討します。

よくある質問

脱水の簡易的なチェック方法はありますか?
毛細血管再充満時間(CRT)が目安となります。指の爪を5秒間押して白くし、離してからピンク色に戻るまでの時間が2秒以上かかる場合は、脱水の可能性があります。
スポーツドリンクを脱水時に与える際の注意点は?
スポーツドリンクはナトリウム濃度が低いため、特に乳幼児の重度脱水時に使用すると、低ナトリウム血症を誘発するリスクがあります。
高度脱水時に輸液を行う際の注意点は?
腎機能が低下している場合、カリウムの排泄が困難になるため、まずはナトリウムを中心とした輸液を行い、排尿を確認してからカリウム補給を検討するのが原則です。

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参考文献

  • 日本災害医学会 用語集 (jadm.or.jp)
  • 杉森宏「治療に伴う有害事象の予防」『日本耳鼻咽喉科学会会報』2013年
  • 髙瀬義昌「防ごう!! 守ろう!! 高齢者の脱水」医療法人社団 至髙会 たかせクリニック
  • 日経メディカルオンライン「軽症胃腸炎の小児には希釈したリンゴジュース」