除氷および防氷技術の仕組みと応用分野

📌 主なポイント
- ✓除氷は物の表面から雪や氷、霜を取り除くプロセスであり、防氷は氷の再凝固や固着を防ぐ処置である。
- ✓航空機の地上除氷には、主にプロピレングリコールを主成分とする薬剤が使用される。
- ✓道路の除氷には伝統的に塩化ナトリウムが使われてきたが、金属腐食や環境への配慮から代替の有機化合物なども利用されている。
除氷(じょひょう、英語: De-Icing)とは、物の表面から雪や氷、霜を取り除く作業やプロセスのことである。これに対して防氷(ぼうひょう、英語: Anti-Icing)とは、除氷を行うだけでなく、化学薬品を利用して物の表面に留まり、氷の再凝固を遅らせたり、機械的に取り除きやすいように氷の固着を防いだりする処置を指す。
主な除氷・防氷の手法
除氷には、こする、押すなどの機械的手法で物理的に取り除く方法や、加熱によって融解させる方法、さらには水の凝固点を下げる化学薬品を用いる手法がある。これらは状況に応じて単独で、あるいは組み合わせて実施される。
航空機における除氷と防氷
凍結条件での降水がある場合、航空機の地上での除氷は必須の安全作業である。機体に凍った汚染物質が付着すると、重要な動翼の形状が損なわれ、滑らかな気流が乱されることで揚力が大幅に低下し、空気抵抗が増加して墜落の原因になり得る。また、飛行中に剥離した氷がエンジンやプロペラに吸い込まれることで推進力が失われる危険性もある。
化学的除氷
地上では、プロピレングリコールと添加物からなる除氷剤が広く使用されている。エチレングリコールも低温下で利用されることがあるが、毒性の観点からプロピレングリコールの方が一般的である。防氷においては、粘性のある液体を用いて保護層を形成し、残留効果によって地上静止時の氷の再形成を防ぐ。
飛行中の除氷・防氷システム
飛行中の着氷に対処するため、航空機にはいくつかのシステムが備えられている。低速機では主翼や尾翼の前縁部に空気圧式のゴム製防氷ブーツが用いられ、膨張・収縮のサイクルによって氷をひび割れさせて剥離させる。また、現代の民間固定翼機では、エンジンから供給される暖気を機体表面の内側空洞へ流し込むブリードエア式システムが広く採用されている。
道路および空港舗装面における除氷
道路や空港の滑走路などの舗装面では、塩化ナトリウム(岩塩)をはじめとする塩類や、環境負荷を考慮した有機化合物(農業副産物など)が散布される。塩化ナトリウムは安価で広く利用されているが、金属やコンクリート内の鉄筋を腐食させる特性があるため、航空機や設備への影響を考慮して空港では塩素化合物が避けられ、代わりにプロピレングリコールなどが用いられる。
環境への影響
塩化ナトリウムや塩化カルシウムなどの除氷用塩類は土壌に蓄積し、動植物に悪影響を及ぼすことがある。また、エチレングリコールやプロピレングリコールは表層水で生分解される際に高い生物化学的酸素要求量(BOD)を必要とするため、水中の溶存酸素量を急激に低下させ、水生生物の生存を脅かす原因となる。