無線工学

電波伝播の基礎と周波数・経路別分類

電波伝播の基本概念、周波数帯ごとの分類、地上波や電離層反射波などの伝播経路、および異常伝播現象について解説する百科事典記事です。

📌 主なポイント

  • 電波伝播とは、電波が空中を伝わり離れた地点に到達する現象である。
  • 日本の電波工学分野では「電波伝搬」という表記も広く用いられている。
  • 電波の伝播形態は周波数帯や大気の状態、電離層の影響によって大きく変化する。

電波伝播(でんぱでんぱん、英語: radio propagation)とは、電波が空間を伝わり、離れた地点に到達する現象を指す。無線通信は、基本的にこの電波伝播の物理的性質を利用して行われる。

なお、日本の電波工学の分野においては「電波伝搬」という表記が多く用いられる。これは、日本の電波法において「propagation」に対応する訳語として「伝搬」という用語が採用されていることに起因する。

周波数による分類

電波伝播の様態は使用する周波数帯によって大きく異なり、これを伝播モードと呼ぶ。周波数帯による分類は以下の通りである。

  • VLF(超長波 / 3 - 30 kHz): 地球と電離層の間に沿って伝播する。
  • LF(長波 / 30 - 300 kHz): 地球と電離層の間に沿って伝播し、地表波としての性質を持つ。
  • MF(中波 / 300 - 3000 kHz): 昼間は地表波として伝播し、夜間は電離層(E層)で反射する。
  • HF(短波 / 3 - 30 MHz): 電離層(E層やF層)による反射を利用して遠方に到達する。
  • VHF(超短波 / 30 - 300 MHz): 見通し距離内の直接波が基本となるほか、電離層(Es層)反射による伝播も生じる。
  • UHF(極超短波 / 300 - 3000 MHz): 見通し距離内の直接波による通信が主となる。

経路による分類

地上波

電波が地表に沿って、あるいは地表付近を伝播する経路である。送信点と受信点を直線で結ぶ直接波、地表面で反射する大地反射波、障害物の背後に回り込む回折波、地表面に沿って進む地表波に分類される。

上空波(電離層反射波)

地表面から上空50から500キロメートル付近に存在する、電子密度の高い電離層を利用した伝播経路である。主に短波帯の電波が電離層で反射し、見通し距離を大きく超える遠隔通信を可能にする。

対流圏波

大気中の温度や湿度の垂直勾配、あるいは屈折率の不連続面によって電波が屈折・反射する現象である。これによりラジオダクトなどが形成され、極超短波が見通し距離を超えて異常伝播することがある。

異常伝播

自然現象の影響により、通常とは異なる経路や強度の電波伝播が発生することを異常伝播と呼ぶ。主な原因や現象としては、スポラディックE層(Es層)、デリンジャー現象、磁気嵐、流星散乱などが挙げられる。

よくある質問

電波伝播と電波伝搬の違いは何ですか?
意味上の大きな違いはありませんが、日本の電波法では「propagation」の訳語として「伝搬」が採用されているため、電波工学の分野では「伝搬」という表記が広く使われています。
中波(MF)の伝播は昼と夜でどのように変わりますか?
昼間は地表波として伝播しますが、夜間になると電離層(E層)での反射波が加わるため、遠方まで電波が届きやすくなります。
異常伝播を引き起こす主な要因は何ですか?
スポラディックE層の発生、デリンジャー現象、磁気嵐、大気中の屈折率の不連続などが主な要因として知られています。

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参考文献

尾池和夫, 山田聡治「地震に伴う電磁放射の波形記録システムと1993年北海道南西沖地震前後の記録」防災科学技術研究所研究資料 第166巻, 1995年.