電波通信の技術体系と歴史的発展

📌 主なポイント
- ✓無線通信は、主に電波を利用して物理的な伝送路を敷設せずに情報を送受信する電気通信技術である。
- ✓電波法施行規則において、無線通信は電波を使用した記号、信号、文言、影像、音響等の送信・発射・受信と定義されている。
- ✓19世紀後半のヘルツによる電波発生の成功や、マルコーニらによる実験を経て、20世紀初頭から無線電信・無線電話の実用化が進んだ。
- ✓1932年には万国電信連合と国際無線電信連合が統合され、国際電気通信連合(ITU)が設立された。
無線通信(むせんつうしん、英: wireless communication)とは、主に電波を利用して行う電気通信の総称である。一般には短縮して「無線」とも呼ばれる。伝送路として物理的なケーブルや導線を用いる有線通信に対して、空間を媒体として情報を送受信する点に大きな特徴がある。
定義と基本特徴
日本国内の法令である電波法施行規則(第2条第1項第15号)においては、無線通信を「電波を使用して行うすべての種類の記号、信号、文言、影像、音響又は情報の送信、発射又は受信をいう」と定義している。無線通信には、有線通信とは異なるいくつかの固有の特徴が存在する。
- 伝送路としての物理的な線を敷設する必要がないため、移動体や孤立した地点への接続性に優れる。
- 使用する周波数や送信出力に応じて広範囲にサービスを提供でき、多数の端末やノードとの同時通信、あるいは不特定多数への放送用途に適合する。
- 天候などの伝送路状況の変化や、自然現象・電子機器等の妨害源による影響を受けやすい。
- 空間を伝播する特性上、第三者による傍受のリスクが比較的高いため、高度な変調方式の採用や暗号化技術などの秘匿措置が講じられる。
原義としてはケーブルを用いない通信全般を指すため、広義には赤外線リモコンなどの光無線通信や音波を利用した通信も含まれるが、一般には電波を用いた通信システムを指すことが多い。
主な用途
無線通信は、現代社会において多様な分野で活用されている。主な用途としては以下のようなものが挙げられる。
- ラジオ放送およびテレビジョン放送
- 携帯電話やスマートフォンなどの移動体通信
- 無線LAN(Wi-Fi)やBluetoothといった近距離ワイヤレスネットワーク
- 船舶無線、航空無線、警察無線、消防無線、防災行政無線などの各種業務無線
- 個人の趣味や災害時の補助的通信手段として利用されるアマチュア無線

歴史的発展
無線通信の技術は、19世紀後半からの電磁気学の進展とともに発展した。1888年にハインリヒ・ヘルツが火花送信機を用いて電波の発生に成功し、1890年代にはグリエルモ・マルコーニやアレクサンドル・ポポフらが実用的な無線通信実験に成功した。
20世紀初頭に入ると音声や音楽を電波に乗せる無線電話の実験が進み、1912年には鳥潟右一、横山英太郎、北村政次郎らがTYK式無線電話を発明した。また、国際的な通信秩序の形成も進み、1932年には万国電信連合と国際無線電信連合が統合され、国際電気通信連合(ITU)が設立された。
有線通信との比較
固定地点間の通信を行う場合、有線通信と無線通信の双方が選択肢となる。費用の構造として、有線通信は回線の長さに応じてコストが積み上がり、無線通信は送受信設備の数に応じてコストが積み上がるため、長距離通信においては無線通信が優位性を持つ場合があった。
しかし、1990年代以降は光ファイバー通信の大容量化と低コスト化が進み、固定電話網などの長距離回線は無線から光ファイバーによる有線通信へ移行していった。一方で、移動体通信や、物理的配線が困難な軍事作戦、さらには災害時などの非常時通信においては、無線通信が不可欠な役割を果たし続けている。