電力工学

電線路の概要と構造

電線路の概要と構造
電線路の定義、構成要素、および送電・配電における技術的側面や安全基準について解説します。

📌 主なポイント

  • 電線路は、電力を運ぶための電線およびその支持物・付帯設備を含む電力設備である。
  • 実際の送電線や配電線は、回路要素が配線全体に分布する「分布定数回路」として扱われる。
  • 日本では、電線路周辺の磁束密度は200μT以下となるよう技術基準で定められている。

電線路とは、発電所、変電所、開閉所、および電気使用場所相互間を接続し、電力を伝送するための電線、ならびにそれを支持・保蔵する工作物を含む電力設備全体を指します。電気工学において、通常の使用状態で電気が通じている場所を指す「電路」という概念とは異なり、電線路は電力供給を目的とした具体的な設備体系を指す用語です。

線路定数と分布定数回路

電気回路理論では、抵抗、インダクタンス、静電容量などの回路要素を個別の素子として扱いますが、実際の送電線や配電線では、これらの要素が配線全体に分布して存在します。このような回路を「分布定数回路」と呼び、配線の長さや形状、位置関係に依存する単位長あたりの値を「線路定数」として扱います。

電線路の構成要素

電線路は主に以下の要素で構成されています。

  • 電線送電線や配電線として使用される裸電線、絶縁電線、ケーブルなど。
  • 支持物:電線を支えるための鉄塔、電柱(鉄筋コンクリート柱、木柱、鋼管柱など)。
  • がいし:電線と支持物を電気的に絶縁するために使用される部材。
鉄塔と送電線
鉄塔と送電線(1000kV設計 南いわき幹線)
作業中の送電鳶
作業中の送電鳶
がいしと送電線
電線はがいしを介して鉄塔と接続されている

設置形態

電線路の設置場所や形態は多岐にわたります。代表的なものとして、空中に架設される「架空電線路」や、地下に埋設される「地中電線路」があります。その他、トンネル内、水上、水底など、環境に応じた施設方法が採用されています。

日本の主要送電網
日本の電力会社の管轄と主要送電網

技術的課題と安全対策

電磁界への対応

高圧線から発生する低周波電磁界については、長年研究が行われています。日本では『電気設備に関する技術基準を定める省令』により、変電所等以外の場所に施設される電線路等の周辺において、磁束密度の平均値が200μT以下となるよう設置することが義務付けられています。

コロナ放電

高電圧送電線では、がいし付近で空気の絶縁が部分的に破壊され「コロナ放電」が発生することがあります。これにより騒音や電力損失が生じるため、がいしの清掃や、多導体方式の採用による電位傾度の低減といった対策が講じられています。

よくある質問

電線路と電路の違いは何ですか?
電路は電気工学一般において「通常の使用状態で電気が通じている場所」を指す概念ですが、電線路は電力供給を目的とした電線、支持物、付帯設備を含む具体的な電力設備体系を指します。
高圧線の電磁界に対する日本の規制はありますか?
はい。電気設備に関する技術基準を定める省令により、変電所等以外の場所に施設される電線路等の周辺において、磁束密度の平均値が200μT以下となるように設置することが定められています。
送電線で発生するコロナ放電とは何ですか?
高電圧によりがいし付近の空気の絶縁が部分的に破れる現象です。騒音や電力損失の原因となるため、電線の径を太くするなどの対策が行われています。

関連記事

送電線配電線電気設備に関する技術基準を定める省令電磁界

参考文献

  • 電気設備に関する技術基準を定める省令(平成九年三月二十七日通商産業省令第五十二号)
  • 電気設備の技術基準の解釈
  • 経済産業省:送電線等の電力設備のまわりに発生する電磁界と健康
  • 社団法人 日本電気技術者協会:送電線路のコロナ放電現象と障害及び防止対策