物理学
物理学における拡散現象の基礎と理論

物理的な現象としての拡散について、理論的背景や物質・熱・運動量・電子の拡散、および特異な拡散現象を解説します。
📌 主なポイント
- ✓拡散は粒子、熱、運動量、電子などが散らばり広がる物理現象である。
- ✓巨視的な分子の拡散はフィックの法則に従って表現される。
- ✓物質の拡散は固体、液体、気体、超臨界流体のいずれにおいても発生する。
拡散(かくさん、英: diffusion)は、粒子、熱、運動量、電子などが散らばり広がる物理的な現象です。化学反応や外力によるものではなく、流体の乱雑な運動の結果として日常的にも広く観察されます。
理論的背景
拡散は輸送現象の一種であり、拡散方程式によって表現されます。巨視的な分子の拡散はフィックの法則に、巨視的な熱エネルギーの拡散はフーリエの熱伝導の法則に従います。また、電場中での電子の拡散は基本的にはオームの法則に従います。
物理量の場に勾配が存在するときに明らかな拡散が見られます。流束密度は、濃度勾配や温度勾配などの勾配に、拡散係数や熱伝導率、導電率といった物理的性質を示す係数をかけた値に等しくなります。
物質の拡散
物質の拡散は、各分子や原子の熱運動に基づく物質の運動であり、固体、液体、気体、超臨界流体中で発生します。

物質拡散の歴史的な研究としては、1829年に気体における拡散、1850年に液体における拡散の詳細な観察を報告したトーマス・グレアムの業績が挙げられます。また1855年にはアドルフ・オイゲン・フィックがフィックの法則を提唱しました。
さまざまな拡散現象
拡散現象には物質の移動以外にも様々な形態が存在します。
- 熱伝導:温度勾配のある物質中を熱が移動する現象です。
- 運動量の拡散:流体の層流において、表面近くの境界層を通して運動量が拡散します。
- 電子の拡散:導体中における電子の流れ(電流)を引き起こす現象です。
- 光子の拡散:光学的深さが大きく平均自由行程が非常に短い物質内での光子の移動です。
特異な拡散
通常の拡散は勾配を下る方向に起こりますが、相分離の過程などでは物質が高濃度の方へ移動する「逆拡散」が起きることもあります。また、外部からの攪拌などによる強制拡散や、水温と塩分濃度が異なる海水の混合に見られる二重拡散などが知られています。
よくある質問
拡散とはどのような現象ですか?
粒子、熱、運動量などが流体の乱雑な運動の結果として散らばり、広がる物理的な現象を指します。
物質の拡散はどのような状態で起きますか?
固体、液体、気体、超臨界流体のすべてにおいて、分子や原子の熱運動に基づいて発生します。
逆拡散とは何ですか?
通常は高濃度から低濃度へ向かう拡散とは異なり、相分離の過程などで物質が高濃度の方へ移動する現象のことです。
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参考文献
- IUPAC Gold Book - diffusion
- 小岩昌宏, 中嶋英雄『材料における拡散』内田老鶴圃, 2009年.
- 駒井謙治郎 編『機械材料学』日本材料学会, 1999年.
- 関根義彦『海洋物理学概論』成山堂書店, 2003年.