無機化学

ヘキサフルオロ白金(V)酸ジオキシゲニル

ヘキサフルオロ白金(V)酸ジオキシゲニル
ヘキサフルオロ白金(V)酸ジオキシゲニル(O2PtF6)の化学的性質、構造、および貴ガス化合物の発見における歴史的役割について解説します。

📌 主なポイント

  • 化学式はO2PtF6である。
  • ジオキシゲニルカチオン(O2+)を含む最初の化合物である。
  • ニール・バートレットにより1962年に報告された。
  • 貴ガス化合物の発見の端緒となった重要な物質である。

ヘキサフルオロ白金(V)酸ジオキシゲニル(Dioxygenyl hexafluoroplatinate(V))は、化学式 O2PtF6 で表される無機化合物です。この化合物は、ジオキシゲニルカチオン(O2+)を含む初めて発見された物質として知られています。

歴史的意義

1962年、化学者のニール・バートレット(Neil Bartlett)によって報告されました。バートレットは、フッ化白金(VI)(PtF6)が酸素分子(O2)を酸化してO2+を生成できることに着目しました。酸素の第一イオン化ポテンシャル(12.2 eV)とキセノンのそれ(12.13 eV)が極めて近い値であることから、彼はキセノンも同様に酸化可能であると推測しました。この着想は、それまで不活性であると考えられていた貴ガスが化合物を形成できることを証明する「ヘキサフルオロ白金酸キセノン」の発見へと直結しました。

合成

本化合物は、酸素気体とフッ化白金(VI)を反応させることで合成されます。また、白金スポンジと酸素、フッ素気体を高温で反応させる手法や、二フッ化酸素(OF2)と白金スポンジの反応によっても得ることが可能です。

構造と性質

ヘキサフルオロ白金(V)酸ジオキシゲニルはイオン結晶であり、低温では菱面体晶系、高温では立方晶系の結晶構造をとります。立方晶系においては、八面体形のPtF6-アニオンとO2+カチオンが規則正しく配置されています。四フッ化炭素などの溶媒には不溶であり、他の白金(V)化合物を合成するための出発原料としても利用されます。

よくある質問

ヘキサフルオロ白金(V)酸ジオキシゲニルはなぜ重要なのですか?
この化合物の発見により、酸素分子が酸化されてカチオンを形成できることが示され、その知見が貴ガスであるキセノンの化合物合成へとつながったためです。
この化合物はどのように合成されますか?
酸素気体とフッ化白金(VI)を反応させる方法や、白金スポンジと酸素・フッ素を高温で反応させる方法などが知られています。

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参考文献

  • Bartlett, N.; Lohmann, D. H. (1962). "Fluorides of the Noble Metals. Part II. Dioxygenyl hexafluoroplatinate(V), [O2]+[PtF6]−". J. Chem. Soc. 115: 5253–5261. doi:10.1039/jr9620005253
  • Bartlett, N. (1962). "Xenon hexafluoroplatinate(V), Xe+[PtF6]−". Proc. Chem. Soc.: 197–236. doi:10.1039/PS9620000197
  • Beveridge, A. D.; Clark, H. C. (1967). "Pentahalides of the Transition Metals". In Gutmann, Viktor. Halogen Chemistry. 3. Academic Press. pp. 179–226. ISBN 9780323148474