輸送手段

犬ぞり:歴史と使役の概要

犬ぞり:歴史と使役の概要
犬ぞりの歴史、使役動物としての役割、および北極圏における移動手段としての発展について解説します。

📌 主なポイント

  • 犬ぞりの操縦者は「マッシャー」と呼ばれる。
  • 北極圏のそり犬は約9,500年前から独自に発展してきた。
  • 1994年以降、南極大陸への犬の持ち込みは条約により禁止されている。

犬ぞり(いぬぞり)は、そりを犬に牽かせる移動手段、およびその構造全体の名称です。寒冷な高緯度地域において、馬などの一般的な使役動物が活動できない環境下で、人間や荷物を運ぶための重要な交通手段として発展しました。犬ぞりによる輸送を「マッシング」と呼び、操縦者は「マッシャー」と呼ばれます。

歴史と発展

北極圏におけるそり犬は、約9,500年前から他の犬種やオオカミとの交雑をほとんど起こさず、独自の進化を遂げてきました。氷の下が海である北極圏において、氷の割れ目を避ける判断能力を持つそり犬は、安全な交通手段として不可欠な存在でした。スノーモービルが普及する以前は、北極地方の探検や日常的な移動において主要な役割を果たしていました。

1840年代のマンダン族の犬ぞり
1840-1843年頃に描かれたマンダン族の犬ぞり(カール・ボドマー画)

地域による呼称と構造

犬ぞりの呼称や構造は地域や文化によって異なります。アイヌ語では「ヌソ」と呼ばれ、牽引するそりは「シケニ」と呼ばれます。また、イヌイットの伝統的なそりは「Qamutiik」と呼ばれ、木や骨、アザラシの皮などを用いて精巧に作られてきました。

伝統的な犬ぞりの構造図
伝統的な犬ぞりの基本構造を示す図説

南極探検における役割

犬ぞりは南極探検の歴史においても重要な役割を果たしました。ロアール・アムンセンは南極点到達の際に犬ぞりを活用しました。日本においても、白瀬矗率いる南極探検隊が樺太アイヌの協力を得て犬ぞりを導入した歴史があります。しかし、1991年に採択された「環境保護に関する南極条約議定書」により、1994年以降、南極大陸への犬の持ち込みは禁止されています。

アラスカでの犬ぞり
アラスカ州ノースロップにおける犬ぞりの様子

そり犬の特性と操縦

そり犬は寒さに強く、持久力と粗食に耐える能力を備えています。犬の繋ぎ方には、縦列に繋ぐ「タンデムタイプ」と、一頭ずつ直接そりに繋ぐ「ファンタイプ」の2種類が主に存在します。

10頭引きの犬ぞり
10頭引きの犬ぞり(タンデムタイプ)
ユーコン・クエストの様子
世界最高峰のレース「ユーコン・クエスト」の様子

よくある質問

犬ぞりの操縦者を何と呼びますか?
犬ぞりの操縦者は「マッシャー」と呼ばれます。
なぜ南極で犬ぞりが使われなくなったのですか?
1991年に採択された「環境保護に関する南極条約議定書」により、環境保護の観点から1994年4月1日以降、南極大陸への犬の持ち込みが禁止されたためです。
そり犬の繋ぎ方にはどのような種類がありますか?
犬を縦列に繋ぐ「タンデムタイプ」と、一頭ずつ直接そりに繋ぐ「ファンタイプ」の2種類が主な繋ぎ方です。

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参考文献

  • 井部俊子「犬ぞりとリードドッグ」医学界新聞 (2022)
  • 「月刊シロㇿ12月号」アイヌ語アーカイブ (2016)
  • 大英博物館所蔵品データベース (sledge)
  • 朝日新聞デジタル「北極圏のそり犬 約1万年前から極寒の地で独自に発展」(2020)
  • 産経ニュース「【南と北の島物語 樺太と南洋統治】(29)白瀬と南極へ行った樺太の人と犬」(2023)