ドル(通貨単位)の歴史と概要

📌 主なポイント
- ✓「ドル」という名称は、16世紀にボヘミアで鋳造された銀貨「ターラー」に由来する。
- ✓ドル記号($)は、メキシコやスペインの通貨ペソを表す「P's」の変形などに由来するという説が有力である。
- ✓日本語の「ドル」という呼び方は、江戸時代末期に伝わったオランダ語の「ドルラル」が明治時代に省略されたものである。
ドル(英: dollar)は、世界中の複数の国や地域で使用されている通貨単位である。通貨記号としては「$」が用いられる。日本では、字体の見立てからドル記号に似た漢字の「弗(ふつ)」が当てられることもある。

特定の国家名を指定せずに単に「ドル」と呼んだ場合、通常はアメリカ合衆国の通貨であるアメリカ合衆国ドルを指す。その他の国や地域のドルを指す場合は、オーストラリア・ドルや香港ドルのように国名や地名を冠して区別される。
語源と歴史的背景
「ドル(ダラー)」という名称は、ドイツで流通した歴史的通貨であるターラー(Thaler)に由来する。16世紀、ボヘミアのザンクト・ヨアヒムスタール(現在のチェコ・ヤーヒモフ)にある銀山で鋳造された「ヨアヒムスターラー」という銀貨がその起源である。
この銀貨は大型で品質が優れていたため、当時不足していたフローリン金貨に代わって広く流通した。品質の高さで知られたターラーという言葉が良貨の代名詞となり、それが訛って「ダラー」という一般名詞としてヨーロッパ各国へ広まった。その後、アメリカ合衆国をはじめとする各地において、自国通貨の名称として採用されることとなった。
日本においては、江戸時代末期にオランダから「Dollar」が伝わり、オランダ語の音そのままに「ドルラル」と称されていた。これが明治時代に入ってから「ドル」と省略され、現在の日本語として定着している。
ドル記号の由来
ドル記号($)の起源には複数の説が存在するが、最も有力とされるのは、北米地域で広く流通していたスペインおよびメキシコの通貨ペソ(メキシコドル)に由来するという説である。

経済史学者の研究によれば、ペソを表す「P's」という複数形の表記が次第に簡略化され、PとSが重なり合う形で書かれるようになった結果、「$」の記号が形成されたとされる。

その他にも、縦線を2本書くデザインについて、スペインドルに記されたジブラルタル海峡の「ヘラクレスの柱」に由来するという説や、当時のペソが8レアル換算であったことから「8R」の文字が変形したという説などが挙げられている。

現行および過去の通貨
現在、ドルという名称や通貨単位を持つ通貨はアメリカ合衆国ドルのほか、オーストラリア・ドル、カナダ・ドル、シンガポール・ドル、香港ドルなど多数存在する。一方で、歴史上にはイギリス領西インド諸島・ドルやジンバブエ・ドル、テキサス・ドルなど、さまざまな理由から廃止されたドル通貨も存在した。