化学物質

ドライアイスの特性と安全な取り扱い

ドライアイスの特性と安全な取り扱い
ドライアイスの物理的性質、製造工程、および二酸化炭素中毒や破裂事故を防ぐための安全な取り扱い方法について解説します。

📌 主なポイント

  • ドライアイスは二酸化炭素の固体であり、常圧下ではマイナス78.5度で直接気体に昇華する。
  • 昇華すると体積が約750倍に膨張するため、密閉容器に入れると破裂・爆発の危険がある。
  • 高濃度の二酸化炭素は呼吸中枢に影響を与え、窒息や意識消失を招くため、換気が不可欠である。

ドライアイスは、二酸化炭素(CO2)を固体化した物質の一般的な呼称です。常圧環境下では液体を経ることなく直接気体へと変化する「昇華」という性質を持ち、その際に周囲から熱を奪うことで強力な冷却効果を発揮します。この特性から、生鮮食品の保冷や輸送、工業的な洗浄用途などに広く利用されています。

ドライアイス
常温常圧下で昇華するドライアイス。

物理的性質

ドライアイスの昇華温度は1気圧においてマイナス78.5度です。冷却能力は約630 kJ/kgであり、同重量の氷と比較して約2倍、同容積では約3.3倍の冷却能力を有します。空気中に置くと周囲の水分が凍結し、白煙が発生します。この白煙は二酸化炭素そのものではなく、空気中の水蒸気が冷却されて微細な氷の粒となったものです。

二酸化炭素の分子構造
二酸化炭素の固体の分子構造模式図。

製造工程

ドライアイスは、石油精製やアンモニア製造、ビール醸造などの過程で副産物として発生する二酸化炭素を回収・精製して製造されます。精製された二酸化炭素を圧縮・冷却して液化させ、これを大気圧下で断熱膨張させることで粉末状の固体を得ます。市販されるブロック状やペレット状の製品は、この粉末をプレス機で圧縮成形したものです。

ペレット状のドライアイス
取り扱いが容易なペレット状のドライアイス。

安全上の注意

ドライアイスの取り扱いには、重大な事故を防ぐための注意が必要です。

二酸化炭素中毒と酸欠

ドライアイスが昇華して発生する二酸化炭素は、空気より重く足元に滞留しやすい性質があります。高濃度の二酸化炭素を吸入すると、窒息や意識消失を引き起こす危険があります。密閉された空間や換気の不十分な場所での使用は避け、常に通気を確保してください。特に葬儀の現場や、低温培養室などの閉鎖空間での死亡事故が報告されています。

破裂事故

ドライアイスは昇華すると体積が約750倍に膨張します。ペットボトルやガラス瓶などの密閉容器に入れて保存すると、内部圧力が急上昇し、容器が破裂・飛散して重傷を負う危険性が非常に高いです。密閉容器での保管は絶対に行わないでください。

水に入れたドライアイス
水に入れると大量の白煙を発生する。

凍傷

ドライアイスの表面温度は極めて低いため、直接手で触れると凍傷を負う恐れがあります。取り扱う際は必ず手袋やトングを使用してください。また、口に含む行為は凍傷や中毒の危険があるため厳禁です。

ドライアイス洗浄
タイヤの金型洗浄に使用されるドライアイス。

よくある質問

ドライアイスの白煙は何ですか?
ドライアイスそのものではなく、周囲の空気が冷却されることで、空気中の水蒸気が微細な氷の粒(霧)となって現れたものです。
ペットボトルで保存しても良いですか?
いいえ、絶対に避けてください。昇華による膨張で容器内の圧力が急上昇し、破裂して非常に危険です。
ドライアイスを触っても大丈夫ですか?
直接触れると凍傷の危険があります。必ず厚手の手袋やトングを使用して取り扱ってください。

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二酸化炭素保冷剤昇華凍傷

参考文献

  • 日本液炭「物性データ - ドライアイス」
  • レゾナック・ガスプロダクツ「炭酸ガスとドライアイスの製造工程」
  • 消費者庁「棺内のドライアイスによる二酸化炭素中毒に注意」
  • 国民生活センター「ドライアイスを入れて密閉したペットボトルが破裂して大けが!!」