英語教育の理論と歴史的展開
📌 主なポイント
- ✓英語教育の指導法には、行動主義に基づくオーディオリンガル法(AL法)や、意味の生成と相互作用を重視するCLT(コミュニカティブ・ランゲージ・ティーチング)などがある。
- ✓ESLは第二言語としての英語教育、EFLは外国語としての英語教育を指す。
- ✓日本の学校教育における英語教育は、江戸幕府の洋書調所や開成所などの洋学研究にルーツを持つ。
英語教育(えいごきょういく)とは、英語に関する教育活動や指導内容の総称である。学校教育における教科としての側面のみならず、第二言語や外国語としての学習理論、多様な教授法の研究、さらには各国における制度的導入の歴史まで、広範な分野を網羅している。
理論及び実践
英語教育における理論的な立場や指導法は、言語学や心理学の変遷とともに発展してきた。
英語教育における主な理論的分類
英語教育を表す国際的な略称として、(T)ESL と (T)EFL が挙げられる。
- (T)ESL(Teaching English as a Second Language):第二言語としての英語教育を指し、母語に対する第二言語としての学習や、英語が広く使用されている環境での教育を意味する。
- (T)EFL(Teaching English as a Foreign Language):外国語としての英語教育を指し、英語以外の言語が広く使用されている環境における指導を意味する。
また、欧州では「ELT(English Language Teaching)」という用語も広く使われており、世界最大の学会名でもある「TESOL(Teaching English to Speakers of Other Languages)」も分野全体の総称として用いられる。
代表的な指導法
英語教育の歴史においては、行動主義に基づく伝統的な手法から、コミュニケーションを重視した現代的なアプローチまで、さまざまな教授法が提案されてきた。
オーディオリンガル法(AL法)
AL法は、ミシガン大学のチャールズ・カーペンター・フリーズらによって考案された教授法であり、日本では「オーラル・アプローチ」とも呼ばれる。「外国語は口頭練習から始める」という行動主義に基づき、オペラント条件づけによる習慣強化を狙いとする。授業ではパターン・プラクティスと呼ばれる反復練習が重視され、教師中心で進められる点に特徴がある。しかし、1950年代以降のノーム・チョムスキーらによる言語学の批判を受け、効果的な言語指導理論としての見直しが進んだ。
コミュニカティブ・ランゲージ・ティーチング(CLT)
CLTは、コミュニケーションのための言語教育を意味し、概念・機能シラバスの進化版として位置づけられる。完璧な文法構造の習得や母語話者の模倣よりも、学習者自身が実際の場面状況の中で意味を生成し、コミュニケーション能力を高めることに力点が置かれる。デイビット・ヌナンの提唱した特色をはじめとして、学習者同士の協働活動やロールプレイなどが実践されている。
各国の学校教育における英語教育
諸外国における英語教育の導入や制度設計は、国際情勢や経済的要因に大きく影響されてきた。
- 韓国:1981年から特別活動として導入され、1997年には小学3年生以上での必修化が段階的に進められた。近年ではオンライン英会話の活用なども増加している。
- 台湾:2001年に小学5年生以上で必修化され、2005年には小学3年生に引き下げられた。
- 中国:建国当初はソ連の影響でロシア語が主流であったが、中ソ対立や1978年の改革開放政策を経て英語が第1外国語として重視されるようになった。
- デンマーク:大学教育における英語プログラムの増加に伴い、母語の重要性や教育を受けた国民の流出に関する議論が生じ、政策的な見直しが行われている。
日本の学校教育における英語教育と歴史
日本においては、中学校・高等学校をはじめ、大学等でも英語の授業が課されるほか、小学校での早期教育や民間による英会話市場など、広範な展開を見せている。学問領域としては「英語教育学」として教育学の一分野をなし、「外国語教育学」に含まれることもある。
歴史的には、江戸幕府の「洋書調所」や「開成所」における洋学研究に端を発し、ラナルド・マクドナルドのような母語話者教師による指導が行われた。明治期には森有礼の文政期における小学校令などを経て推進と縮期の波を経験し、戦中・戦後を通じて時局や教育改革の影響を受けながら変遷をたどってきた。
よくある質問
ESLとEFLの違いは何ですか?
オーディオリンガル法(AL法)の特徴は何ですか?
CLTとはどのような指導法ですか?
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参考文献
- 清水稔「外来文化の受容の歴史から見た日本の外国語学習と教育について」『文学部論集』第94巻、佛教大学文学部、2010年。
- 佐藤義隆「日本の外国語学習及び教育の歴史を振り返る:日本の英語学習及び教育目的論再考」『岐阜女子大学紀要』第31号、2002年。
- Nunan, David (1991). “Communicative tasks and the language curriculum”. TESOL Quarterly.