地球科学

エルニーニョ・南方振動(ENSO)のメカニズムと気候への影響

エルニーニョ・南方振動(ENSO)のメカニズムと気候への影響
地球規模の気候変動現象であるエルニーニョ・南方振動(ENSO)について、エルニーニョ現象やラニーニャ現象の仕組み、発生メカニズム、世界および日本の天候への影響を解説します。

📌 主なポイント

  • エルニーニョ・南方振動(ENSO)は、大気の「南方振動」と海洋の海面水温変動が連動する地球規模の自然現象である。
  • 太平洋赤道域東部の海水温が上昇する現象をエルニーニョ現象、低下する現象をラニーニャ現象と呼ぶ。
  • ENSOの変動は、大気海洋相互作用を通じて世界中の天候や異常気象に大きな影響を与える。

エルニーニョ・南方振動(英語: El Niño-Southern Oscillation、ENSO、エンソ)とは、大気と海洋が密接に連動して変動する地球規模の自然現象の総称である。大気側におけるインドネシア付近と南太平洋東部での気圧のシーソー状の変動である「南方振動」と、海洋側における赤道太平洋の海面水温や海流などの変動(エルニーニョ現象・ラニーニャ現象)が一体となった現象であり、世界的な天候変化に波及するテレコネクションの代表例として知られている。

定義と構成要素

ENSOの振れ幅の両端にあたるのが、太平洋赤道域東部の海水温が平年より高くなるエルニーニョ現象と、逆に海水温が低下するラニーニャ現象である。これらの現象が生じていない平常時は、スペイン語で「何もない」を意味するラナーダと呼ばれることがある。

エルニーニョ現象

「エルニーニョ」はもともと南米ペルーおよびエクアドル国境付近の海域で、毎年クリスマス頃に発生する海面水温の上昇現象を指していた。これが1950年代以降、数年に一度の頻度で太平洋の広範囲に影響を及ぼす現象であることが判明し、「エルニーニョ現象」と呼ばれるようになった。

太平洋赤道域では通常、東風である貿易風が吹いており、これによって暖められた海水が西側に寄せられる一方、東部では冷たい海水が湧き上がる(湧昇流)。エルニーニョ発生時にはこの貿易風が弱まり、暖かい海水が東太平洋に戻ることで、東太平洋赤道域の海水温が平年に比べて1度から2度前後上昇する。

ラニーニャ現象

ラニーニャ現象は、エルニーニョ現象とは反対に、東太平洋赤道域の海水温が平年より低くなる現象である。東太平洋における冷たい海水の湧昇が強まり、東西の温度差が大きくなる。エルニーニョ現象の終息後に発生することが多いが、エルニーニョと比較して数年にわたって長期持続する傾向がある。

発生メカニズムと大気海洋相互作用

エルニーニョ・南方振動の根本的な発生原因については、赤道海流の変動や西風バースト、さらには月の潮汐力との関連などが研究されているが、大気と海洋が複雑に影響し合う「大気海洋相互作用」の性質上、完全な解明には至っていない。海水温の変化が気圧の変動を引き起こし、それがウォーカー循環の変化やロスビー波の伝播を通じて世界中の大気の流れを変化させ、各地に異常気象をもたらす。

気候への影響

ENSOは数週間から数か月先の長期予報において極めて重要な撹乱要因となる。日本においては、エルニーニョ現象が発生すると夏は冷夏、冬は暖冬になる傾向があり、ラニーニャ現象が発生した場合にはその逆の傾向が現れることがある。ただし、その影響の現れ方は地域や発生する規模によって異なる。

地球温暖化との関連

地球温暖化がエルニーニョ・南方振動に与える影響については、気候モデルを用いた予測や研究が進められている。太平洋赤道域東部の海水温がわずかに上昇し、エルニーニョのような異常が強まる可能性が指摘されているものの、モデルの再現性の限界などから、温暖化との直接的な因果関係については「関連している可能性がある」という段階にとどまっている。

よくある質問

エルニーニョ・南方振動(ENSO)とは何ですか?
大気における気圧のシーソー状の変動(南方振動)と、太平洋赤道域の海面水温や海流の変動(エルニーニョ・ラニーニャ)が連動して起こる地球規模の気候変動現象の総称です。
エルニーニョ現象とラニーニャ現象の違いは何ですか?
エルニーニョ現象は太平洋赤道域東部の海水温が平年より高くなる現象で、ラニーニャ現象はその逆に海水温が低下する現象です。
エルニーニョ現象は日本の天候にどのように影響しますか?
日本では、エルニーニョ現象が発生すると夏は梅雨が長引いて冷夏になりやすく、冬は暖冬になる傾向があります。
エルニーニョ現象と地球温暖化に関係はありますか?
温暖化に伴いエルニーニョ様の海水温異常が強まる可能性が指摘されていますが、科学的には「関連している可能性がある」という段階であり、完全に断定はされていません。

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参考文献

小倉義光 『一般気象学』 東京大学出版会、1984年。
高薮縁、川辺正樹、中村尚、山形俊男、藤尾伸三 『海のすべて』 ニュートンプレス、2017年。