物理学

電気双極子:物理学における電荷の偏りとモーメント

電気双極子:物理学における電荷の偏りとモーメント
電気双極子の定義、物理的性質、および原子・分子における永久双極子や誘起双極子の概念について解説します。

📌 主なポイント

  • 電気双極子は、正負の等しい電荷が近接して対となった状態を指す。
  • 電気双極子モーメントは、電荷の偏りを表すベクトル量である。
  • 永久双極子は分子固有の性質であり、誘起双極子は外部電場によって生じる。
  • 分極率は、外部電場に対してどれだけ双極子が誘起されやすいかを示す指標である。

電気双極子(でんきそうきょくし、英: electric dipole)とは、大きさが等しく符号が逆である2つの電荷が、ごく近接して対をなしている状態を指す物理学の概念です。電磁気学において、電荷分布の空間的な偏りを記述する基本的なモデルとして用いられます。

定義と電気双極子モーメント

正の電荷 +q と負の電荷 -q がそれぞれ位置 r+ および r- にあるとき、その間隔 δ = r+ - r- が無限小となる極限において、電気双極子の強さは電気双極子モーメント p として定義されます。

電気双極子モーメントの定義式
電気双極子モーメントの定義式

電気双極子モーメントはベクトル量であり、電荷の総和がゼロである系において、電荷分布の1次のモーメントとして計算されます。これは、多重極展開における第一近似として重要です。

電気双極子による場

電気双極子が存在する空間では、その周囲に特有の電場や静電ポテンシャルが形成されます。電荷密度 ρ(x) は、ディラックのデルタ関数を用いて以下のように表現されます。

電気双極子による電荷密度の表現
電気双極子による電荷密度の表現

この電荷分布によって生じる静電ポテンシャル φ(x) は、距離の逆数の勾配として表され、双極子からの距離が離れるほど急激に減衰する性質を持ちます。

物理的実体と分類

電気双極子は、原子や分子といった微視的なスケールで頻繁に現れます。電荷の偏りの起源により、主に以下の2つに分類されます。

  • 永久双極子:分子の構造や電子配置の偏りにより、外部電場がない状態でも固有の電気双極子モーメントを持つもの。水の分子などが代表例です。
  • 誘起双極子:外部電場 E が印加された際に、原子や分子内の電荷が再配置されることで生じるもの。このとき、誘起されるモーメント pp = αE と表され、係数 α分極率と呼ばれます。

よくある質問

電気双極子モーメントの単位は何ですか?
SI単位系ではクーロン・メートル(C・m)が用いられます。また、分子物理学の分野ではデバイ(D)という単位も慣用的に使用されます。
永久双極子と誘起双極子の違いは何ですか?
永久双極子は分子の構造上、常に電荷の偏りを持っているものを指します。一方、誘起双極子は外部から電場が加わったときに一時的に電荷が偏ることで生じるものです。
なぜ電気双極子を考える必要があるのですか?
複雑な電荷分布を近似的に扱う際、多重極展開の第一項として電気双極子を用いることで、遠方における電場やポテンシャルの計算を簡略化できるためです。

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参考文献

J.D.ジャクソン『電磁気学(上)』吉岡書店〈物理学叢書〉、2002年。ISBN 4-8427-0305-9。