化学における電気陰性度の基礎概念と主要な算出尺度

📌 主なポイント
- ✓電気陰性度は、原子が共有結合中の電子を引き寄せる強さの相対的な尺度であり、記号χで表される。
- ✓周期表の元素において、一般に左下に位置する元素ほど小さく、右上ほど大きくなる。
- ✓ライナス・ポーリングは1932年に結合エネルギーの差に基づいて最初の実用的な電気陰性度の尺度を定義した。
- ✓ロバート・マリケンは1934年にイオン化エネルギーと電子親和力の平均値から電気陰性度を定義した。
電気陰性度(でんきいんせいど、英: electronegativity)は、分子内で原子が共有結合に関与する電子を引き寄せる強さの相対的な尺度であり、一般にギリシア文字の χ(カイ)で表される。
異種の原子同士が化学結合を形成するとき、各原子における電子の電荷分布は、当該原子が孤立していた場合とは異なる分布をとる。これは結合の相手の原子からの影響によるものであり、原子の種類によって電子を引きつける強さに違いが存在するためである。この電子を引きつける強さは、元素ごとの相対的な尺度として数値化することができる。一般に、周期表の左下に位置する元素ほど小さく、右上ほど大きくなる傾向がある。
ポーリングの電気陰性度
1932年にライナス・ポーリングによって提案された尺度は、結合エネルギーの実験値と純粋な共有結合の仮定値との差に基づいて定義されている。原子 A と原子 B の結合エネルギーの実測値を $E(\mathrm{A-B})$ とするとき、純粋な共有結合と仮定した場合の結合エネルギーとの差 $\Delta E(\mathrm{A-B})$ は次のように定義される。

この $\Delta E(\mathrm{A-B})$ に関して、次の関係を満たすように決めた $\chi_{\mathrm{P}}^{\mathrm{A}}$ が原子 A に関してのポーリングの電気陰性度である($\chi_{\mathrm{P}}^{\mathrm{B}}$ は原子 B の電気陰性度、 $K$ は適当な係数)。



マリケンの電気陰性度
1934年にロバート・マリケンによって提案された尺度は、原子のイオン化エネルギーと電子親和力に基づいている。原子 A のイオン化エネルギーを $I_{\mathrm{A}}$、電子親和力を $E_{\mathrm{A}}$ として、次の式で求まる $\chi_{\mathrm{M}}^{\mathrm{A}}$ が原子 A のマリケンの電気陰性度である。


ポーリングの電気陰性度とマリケンの電気陰性度は、原子ごとの値の大小関係の傾向が互いに類似しており、次のような換算式も存在する。

マリケンの電気陰性度では、定義式右辺にあるイオン化エネルギーや電子親和力の値が周囲の化学的環境によって変化する場合があり、同じ原子でも状況によって値が異なるという特徴を持つ(例:アセチレンの炭素原子でのマリケンの電気陰性度は、メタンの炭素原子のそれよりも大きな値となる)。
オールレッド・ロコウの電気陰性度
A. L. Allred と E. G. Rochow が提案した尺度は、電気陰性度が原子表面の電場の強さによって決定されるという考え方に基づいている。ある原子中の価電子の有効核電荷を $Z_{\mathrm{eff}}$、原子の共有結合半径を $r$ とするとき、次の式で与えられる。

原子表面での電位は $Z_{\mathrm{eff}}/r$ に比例し、電場の強さは $Z_{\mathrm{eff}}/r^2$ に比例する。この考え方を用い、ポーリングの電気陰性度と似通った値になるように係数が選ばれている。
よくある質問
電気陰性度とは何ですか?
電気陰性度の傾向は周期表でどのように表されますか?
ポーリングの電気陰性度はどのように定義されていますか?
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参考文献
- Shriver, D. F., Atkins, P. W. 『シュライバー無機化学(上)』玉虫伶太・佐藤弦・垣花眞人訳、東京化学同人、2001年。