古代ギリシア哲学
エンペドクレス:古代ギリシアの自然哲学者

古代ギリシアの自然哲学者エンペドクレスの生涯、四元素説、および哲学思想について解説します。
📌 主なポイント
- ✓紀元前5世紀頃にシチリア島のアクラガスで活動した自然哲学者。
- ✓火・水・土・空気の「四元素説」を提唱した。
- ✓宇宙の運動を「愛」と「憎」という二つの力で説明した。
- ✓ストラスブール・パピルスの発見により、その哲学詩の断片が現代に伝わっている。
エンペドクレス(紀元前490年頃 - 紀元前430年頃)は、古代ギリシアの自然哲学者、医者、政治家であり、シチリア島のアクラガス(現在のアグリジェント)で活動しました。彼はソクラテス以前の哲学者の中でも特に重要な人物の一人であり、後の西洋哲学や自然科学に影響を与えた「四元素説」を提唱したことで知られています。

思想と四元素説
エンペドクレスの哲学において最も著名なのは、物質の根源(アルケー)を「火」「水」「土」「空気」の4つの要素(リゾーマタ)とした説です。彼はこれらの要素を結合させる「愛(ピリアー)」と、分離させる「憎(ネイコス)」という二つの対立する力が宇宙の運動を支配していると考えました。この循環的な運動により、世界は生成と消滅を繰り返すと説きました。
また、感覚や魂についても独自の考察を残しており、魂は血液に宿ると主張しました。さらに、魂の転生説を支持し、生命の変転を詩的な言葉で表現しています。
著作とパピルス
彼は『自然について』および『浄め』という哲学詩を著したとされていますが、その大部分は失われ、断片のみが後世に伝わっています。20世紀には、エジプトで発見されたパピルス(ストラスブール・パピルス)が彼の著作の一部であることが判明し、初期ギリシア哲学の貴重な資料として注目を集めました。

伝承と後世への影響
エンペドクレスの死については、エトナ山の火口に身を投じたという伝説が有名ですが、その真偽は定かではありません。この伝説は、後の文学者たちにもインスピレーションを与え、フリードリヒ・ヘルダーリンの戯曲や、芥川龍之介の遺書『或旧友へ送る手記』などにもその名が登場します。
よくある質問
エンペドクレスが唱えた四元素とは何ですか?
火、水、土、空気の4つの要素を指します。彼はこれらを物質の根源(リゾーマタ)と呼びました。
エンペドクレスはどのようにして亡くなったとされていますか?
エトナ山の火口に投身自殺したという伝説が有名ですが、歴史的な事実は不明です。
ストラスブール・パピルスとは何ですか?
エジプトで発見され、1990年代に修復されたパピルス写本です。エンペドクレスの哲学詩の断片が含まれていることが判明しました。
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参考文献
- 納富信留『ギリシア哲学史』筑摩書房、2021年。
- 内山勝利編『哲学の歴史〈第1巻〉哲学誕生―古代1』中央公論新社、2008年。
- 芥川龍之介「或旧友へ送る手記」(青空文庫)