工学の概念、歴史および技術的展開

📌 主なポイント
- ✓工学は数学や自然科学などの基礎科学を実用に応用する学問である。
- ✓「engineering」という言葉の語源にはラテン語の「ingenium」が関係している。
- ✓現代の工学ではCADやCAEなどのコンピュータ支援ソフトウェアが広く利用されている。
工学(こうがく、英: engineering)またはエンジニアリングとは、数学、化学、物理学などの基礎科学を工業生産に応用する学問である。真理の探求を目指す基礎科学に対して、工学は「実用」や合目的性を追求する点を特徴とする。
工学の定義と特徴
基礎科学と工学の違いについて、電子情報通信学会の仙石正和は、理学が「自然界の現象がどうなっているのか、なぜそうなるのか」という既存の状態の理解を追求するのに対し、工学は「どうしたら、未だ存在しない状態や望ましいモノを実現できるか」を追求すると述べている。
日本の国立8大学の工学部を中心とした「工学における教育プログラムに関する検討委員会」(1998年)による定義では、工学は「数学と自然科学を基礎とし、ときには人文社会科学の知見を用いて、公共の安全、健康、福祉のために有用な事物や快適な環境を構築することを目的とする学問である」とされている。
実用の観点から、工学では安全性、経済性、運用・保守性といった価値判断が重要視される。また、資源の制約の中で目的を達成するための技術的な検討や評価は「工学的妥当性」と呼ばれる。
工学の歴史
「工学」という用語や概念自体は18世紀以降に形成された比較的新しいものであるが、それに相当する営みは古代から存在していた。
古代の工学
古代においては、ピラミッドやアレクサンドリアの大灯台、ローマ水道などの大規模な建造物が建設された。紀元前4世紀頃のギリシアでは投石機などの機械式兵器が開発され、アンティキティラ島の機械は最古のアナログコンピュータともいわれている。
近代の展開
17世紀から18世紀にかけて、科学革命と産業革命に伴い工学の専門職が確立された。蒸気機関の発明は機械工学の発展を促し、大量生産の時代をもたらした。その後、19世紀には電気工学や化学工学、航空工学などの専門分野が次々と確立されていった。
コンピュータの利用
現代の工学においてコンピュータは不可欠な役割を果たしている。CADソフトウェアによる設計図の作成や、CAEソフトウェアによる有限要素法を用いた数値解析などにより、物理的なプロトタイプを製作せずとも静的・動的特性の解析が可能となっている。
社会的状況
工学設計は環境、社会、経済に大きな影響を与えるため、その応用には大きな責任が伴う。各分野の学会では行動規約や倫理規約が制定されており、技術者には公共の福祉やアカウンタビリティへの配慮が求められている。