画材・美術材料
絵具の種類と組成に関する総合解説

絵画や工芸に用いられる絵具の基本組成、水性・油性といった種類ごとの特徴、カラーインデックスや自作に関する解説を提供します。
📌 主なポイント
- ✓絵具は主に顕色材(顔料など)と展色材(固着材)、および助剤から構成される。
- ✓水彩絵具の固着材にはアカシア樹脂(ガムアラビック)が用いられる。
- ✓水性アルキド樹脂絵具は、日本では2006年に初めて製品化された。
絵具(えのぐ、絵の具)は、絵画の描画や着彩、工芸品の彩色などに幅広く使用される材料である。主に色彩を呈する顕色材と、それを定着させる展色材(媒剤)、さらに必要に応じて加えられる助剤によって構成される。
組成の基本
絵具の基本的な構造は、色味を決定する顔料などの顕色材と、画面へ定着させるための展色材(固着材)の組み合わせによって成り立つ。乾燥の促進や物性の調整を目的として、助剤が添加されることもある。

種類と分類
絵具は、大きく水性絵具と油性絵具に大別される。さらに、乳濁液の構造や固着材の種類によって細分化される。
水性の絵具
水性の絵具には、アカシア樹脂を固着材とする水彩絵具をはじめ、卵や膠、合成樹脂エマルションなどを展色材に用いる多様な種類が存在する。
- 水彩絵具:アカシア樹脂(ガムアラビック)を固着材としており、一般に透明水彩絵具を指すことが多い。不透明水彩絵具にはガッシュやポスターカラーがある。
- 水性テンペラ:卵やカゼイン、膠、アラビアガムなどを展色材とし、多くは乾燥後に耐水性を持つ。
- 水性アクリル絵具:20世紀に登場したアクリル樹脂エマルションを展色材とする絵具で、乾燥すると耐水性を示す。
- 水性アルキド樹脂絵具:水分が乾燥したのち、化学反応によって数日かけて耐水性の油性塗膜として硬化する特徴を持つ。日本では2006年に初めて製品化された。
- ディステンパー:膠やカゼインなどの水溶性固着剤を用いた絵具であり、室内装飾や舞台美術に用いられることが多い。
- 日本画絵具:岩絵具や泥絵具などは展色材が含まれていない顔料であり、使用時に膠水で溶いて用いられる。

油性の絵具
油性の絵具は、乾燥過程や成分の化学反応を利用して塗膜を形成する。
- 油彩絵具:空気中の酸素と結びついて化学変化を起こし、皮膜を形成する乾性油を固着材として用いる。
- 油性アルキド絵具:乾性油の性質を持たせたアルキド樹脂を展色材とする。
- 溶剤型アクリル絵具:合成樹脂であるアクリル樹脂を固着材としており、主に絵画修復などに活用される。
- 彩漆:漆の樹液に顔料を混ぜたものであり、酸化酵素の作用により硬化する。
絵具の選択とカラーインデックス
絵具を選択する上で重要な指標となるのが使用顔料である。専門家用製品ではカラーインデックス名(Colour Index Generic Name)が記載されている場合があり、同一の名称であれば物性的な傾向が近いことを示している。ただし、メーカーや製品によって複数の顔料が併用されている場合もあるため、適切な選択には基礎的な知識が求められる。
絵具の自作
現在広く普及しているチューブ入りの絵具は19世紀以降に発達したものであり、歴史的には画家や工房が顔料と展色材を練り上げて手作りしていた。現在でも画材店で入手可能な顔料と展色材を用いて自作することが可能である。
よくある質問
絵具の基本的な組成は何ですか?
絵具は、色味を司る顕色材と、画面に定着させるための展色材(媒剤)、必要に応じて加えられる助剤から構成されています。
水彩絵具と油彩絵具の主な違いは何ですか?
水彩絵具はアカシア樹脂などを固着材として水で溶かして使用し、乾燥後も水に溶ける性質を持つものが多い一方、油彩絵具は乾性油を用いて酸化硬化し、乾燥後は耐水性の皮膜を形成します。
カラーインデックスとは何ですか?
絵具に使用されている顔料を識別するための国際的な分類指標であり、専門家用の製品などで配合されている顔料の目安として参考にされます。
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参考文献
ホルベイン工業技術部編 『絵具材料ハンドブック』(新装普及版)、中央公論美術出版、1997年。ロバート・マッセイ著、山添耕治訳、『画家のための処方箋 絵画材料と技法 ハンドブック』、クリエイティブかもがわ発行、2002年。