環境的レイシズム:歴史的背景と社会的不平等

📌 主なポイント
- ✓環境的レイシズムという用語は、1982年のノースカロライナ州ウォーレン郡におけるPCB廃棄物問題を契機にベンジャミン・チャビスによって提唱された。
- ✓米国会計検査院(GAO)やキリスト教連合教会(UCC)の調査により、マイノリティー居住地域と有害廃棄物処理場の立地に関連性があることが示されている。
- ✓アメリカ先住民の土地は、不発弾のある危険な軍事施設やウラン採掘場などの環境負荷が不均衡に押し付けられてきた歴史がある。
環境的レイシズム(英: environmental racism)とは、社会的マイノリティーや人種的少数派が居住する地域に対して、有毒廃棄物施設、軍事基地、その他の環境汚染源が不均衡に集中させられている社会構造や政策を示す言葉である。これは1970年代から1980年代にかけて米国で発展した環境正義運動の中から見出された概念であり、人種階層化された社会における不平等の実態を浮き彫りにしている。
用語の定義と歴史的背景
この概念が広く認知されるきっかけとなったのは、1982年にノースカロライナ州ウォーレン郡で発生したPCB(ポリ塩化ビフェニル)廃棄物の処分場建設に対する反対運動である。当時、キリスト教連合教会(UCC)人種正義委員会の事務局長であったベンジャミン・チャビスによって「環境的人種差別」という用語が導入された。
1983年の米国会計検査院(GAO)の調査や、1987年のUCCによる報告書は、低所得層やマイノリティーの居住地域と有害廃棄物処理場の立地との間に明確な相関関係があることを示した。レッドライニングやゾーニングなどの都市政策、さらには政治的な発言力の欠落が、こうした地域住民を環境被害から守ることを困難にしている。
経済格差と費用便益分析
公共政策における費用便益分析(CBA)では、費用と便益に金銭的価値を割り当てて評価がおこなわれる。しかし、この手法に経済格差の要素が加わると、貧困地域の被害額が低く見積もられ、富裕層に有利な判断が下される傾向が生じる。これが、有害物質の処理場などを低所得地域に配置することを正当化する論理として利用されてきた。
国際的な規模においても、同様の問題が指摘されている。1991年には世界銀行の内部文書(いわゆるサマーズ・メモ)が流出し、環境汚染型産業を最も低コストですむ最貧国に移転させるべきだという主張がなされたことから、発展途上国への廃棄物輸出などは「有害物質帝国主義」として批判の対象となった。
アメリカ先住民とリザベーション

アメリカ先住民は歴史的に土地を奪われ、リザベーションへの強制収容を経験しただけでなく、その土地においてさらなる環境的不利益を被ってきた。例えば、ニューメキシコ州などのナバホ族の土地におけるウラン採掘や、オハイオ川・フォー・コーナーズ地域での資源開発、さらに軍事施設や核廃棄物投棄場の隣接配置などが挙げられる。
また、ノースダコタ州におけるダコタ・アクセス・パイプラインの建設計画を巡っては、スタンディング・ロック・スー族の飲料水源への影響が懸念され、先住民の権利と環境保全を求める大規模な反対運動が展開された。

都市部および軍事環境問題
都市部においても、人種や経済的背景に基づく環境汚染の格差が存在する。アフリカ系アメリカ人のコミュニティでは、鉛塗料やアスベストを含む施設、有害廃棄物施設が不釣り合いに多く配置されていることが社会学者ロバート・ブラードらの研究によって示されている。一例として、ミシガン州フリント市では、水源の切り替えに伴う水道水の鉛汚染が発生し、貧困層やマイノリティーに対する行政の対応の遅れが大きな社会問題となった。
さらに、テキサス州サンアントニオのケリー空軍基地をはじめとする軍事施設周辺においても、危険廃棄物の不適切な管理によって地域住民の健康被害が報告されるなど、軍事活動に伴う環境汚染と人種的背景の偏りが指摘されている。
よくある質問
環境的レイシズムとはどのような意味ですか?
誰によって提唱された言葉ですか?
国際間における環境的レイシズムの例には何がありますか?
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参考文献
- Bullard, Robert D. (2001). "Environmental Justice in the 21st Century: Race Still Matters". Phylon.
- Mohai, Paul; Pellow, David; Roberts, J. Timmons (2009). "Environmental Justice". Annual Review of Environment and Resources.
- Hooks, Gregory; Smith, Chad L. (2004). "The Treadmill of Destruction: National Sacrifice Areas and Native Americans". American Sociological Review.