民族学
北極圏の先住民族:エスキモーとイヌイットの呼称と文化

北極圏に居住する先住民族グループ、エスキモーとイヌイットの呼称の背景、文化、歴史的変遷について解説します。
📌 主なポイント
- ✓エスキモーは単一の民族ではなく、イヌイット系とユピク系に大別される。
- ✓「イヌイット」はカナダやグリーンランドの集団を指す言葉であり、全北方民族の総称として用いるのは不正確である。
- ✓伝統的な食生活は狩猟による生肉が中心であり、極地での生存に必要な栄養素を摂取していた。
エスキモー(Eskimo)は、北極圏のシベリア極東部、アラスカ、カナダ北部、グリーンランドに至るツンドラ地帯に居住する先住民族グループの総称です。単一の民族を指すものではなく、言語や地域によって複数のグループに分類されます。
呼称と分類
「エスキモー」という呼称は、かつては北方民族の総称として広く用いられてきました。しかし、この言葉は他称であり、一部の地域や文脈では差別的なニュアンスを含むと見なされることがあります。カナダなどでは、彼ら自身の言葉で「人々」を意味する「イヌイット(Inuit)」という呼称が公式に採用されています。
学術的および地理的な分類では、大きく以下の二つに大別されます。
- イヌイット系(東部集団):カナダ北部やグリーンランドに居住するグループ。
- ユピク系(西部集団):アラスカ中部以西やシベリアに居住するグループ。
したがって、「エスキモー」をすべて「イヌイット」と呼ぶことは、シベリアやアラスカのユピク系住民にとっては誤った呼称となります。

生活と文化
伝統的な生活様式は、極寒の環境に適応した狩猟採集が中心でした。アザラシやクジラなどの海獣、カリブー(トナカイ)などの陸上動物を獲物とし、その生肉や内臓を摂取することで、植物の育たない環境下でもビタミン類などの必須栄養素を補給してきました。

住居については、移動生活において雪を積み上げて作る「イグルー」が知られていますが、これは定住用の住居ではありません。現代では都市部への定住化が進み、伝統的な移動生活は大きく変化しています。


現代の状況
現在、彼らの社会はキリスト教の影響を強く受けており、伝統的なシャーマニズムの信仰は限定的となっています。また、地球温暖化による海氷の減少は、伝統的な狩猟活動に深刻な影響を及ぼしており、食生活や居住形態の変化を余儀なくされています。
よくある質問
エスキモーとイヌイットは同じ意味ですか?
いいえ、異なります。エスキモーは北方民族の総称として使われてきた言葉ですが、イヌイットは主にカナダやグリーンランドに住む特定の集団を指す言葉です。
イグルーは常に住んでいる家ですか?
いいえ、イグルーは主に移動生活の際に一時的な住居として使用されるもので、定住のための住居ではありません。
なぜ生肉を食べるのですか?
植物の育たない極地において、狩猟した動物の生肉や内臓は、ビタミン類などの必須栄養素を摂取する重要な手段でした。
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参考文献
- スチュアート・ヘンリ「民族呼称とイメージ―「イヌイト」の創成とイメージ操作」『民族学研究』第63巻2号、1998年。
- ニーナ・エドワーズ著、露久保由美子訳『モツの歴史』原書房、2015年。