航空技術

航空用全デジタル電子式エンジン制御装置の概要と仕組み

航空用全デジタル電子式エンジン制御装置の概要と仕組み
航空用エンジンの全ての制御をデジタルコンピュータで行うFADEC(全デジタル電子式エンジン制御装置)の構造、歴史、動作原理について解説します。

📌 主なポイント

  • FADECはFull Authority Digital Engine Controlの略称である。
  • 制御用デジタルコンピュータを中心に、アクチュエータやセンサなどで構成される。
  • 従来の油圧機械式制御と比べて高い制御精度を持ち、燃費の最適化や故障診断機能の向上を実現している。

FADEC(ファデック、またはフェデック)とは、デジタルコンピュータを用いて航空用エンジンの全ての制御を行う制御装置である。「Full Authority Digital Engine Control」の略称であり、日本語では「全デジタル電子式エンジン制御装置」などと訳される。

制御用デジタルコンピュータを中心に、アクチュエータ、センサ、電源回路などから構成されるシステムであり、従来の油圧機械式制御装置と比較して高い制御精度を持つ。これにより燃費を含むエンジン性能の最適化が可能となり、故障診断機能の搭載や制御機能の追加・変更が容易になるなど、エンジン開発や改良の面でも大きな利点をもたらしている。

歴史的背景

初期の航空機用エンジン制御には、確実な動作が期待できる油圧機械式制御装置(HMU)が長年使用されていた。しかし、油圧機械式では単純な制御しか行えず、エンジン技術の高性能化に伴う過酷な要求に応えることが難しかった。レシプロエンジンの時代には、操縦士や航空機関士が高度に応じて手動で混合気などを調整する負担があったため、機械式アナログコンピュータを用いた自動制御装置の開発が進められた。

その後、電子部品の信頼性が向上するにつれて、アナログ電気式の制御装置が登場した。1960年代にはロールスロイス 593エンジンに搭載され、従来型の油圧機械式に電気回路を付加する形で微細な調整が行われるようになった。1970年代末になると、アナログ式制御装置はデジタル式へと移行していき、NASAとプラット・アンド・ホイットニーによる実験を経て商用ジェットエンジンへの導入が進んだ。

レシプロエンジン用のFADECシステム
レシプロエンジン用のFADEC

構成と動作原理

FADECは、主に電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)、電気系統(センサー、アクチュエーター、配線類)、および油圧系統から成り立っている。21世紀の航空機では、安全性を確保するためにECUと電気系統を2重に持つ冗長構成が広く採用されている。

動作においては、電気系統によるセンサー類の入力や機体制御システムからの要求に基づき、ECU内部で演算処理が行われる。これにより、燃料計量弁の開閉度、イグニッションユニット、可変静翼のアクチュエーターなどが電気的に制御され、エンジン全体の動作が最適に管理される。

よくある質問

FADECは何の略ですか?
Full Authority Digital Engine Control(フル・オーソリティ・デジタル・エンジン・コントロール)の略です。
FADECの主な構成要素は何ですか?
制御用デジタルコンピュータであるECU(Electronic Control Unit)、センサーやアクチュエーターなどの電気系統、および油圧系統などから構成されています。
FADECはどのように安全性を確保していますか?
21世紀の航空機においては、ECUや電気系統を2重の冗長構成にすることで、万が一の故障時にも安全にエンジン制御が継続・切り替えられる仕組みになっています。

関連記事

アビオニクスエンジンコントロールユニット航空技術エンジンテクノロジー

参考文献

渡辺紀徳「エンジンの制御」『飛行機の百科事典』2009年、365-367頁。
山根秀公、松永易、草川剛「飛行推進統合制御対応航空エンジン制御装置の研究」『日本航空宇宙学会論文集』第56巻第649号、2008年、80-87頁。