航空工学

フェネストロン:ヘリコプター用ダクテッドファン技術の解説

フェネストロン:ヘリコプター用ダクテッドファン技術の解説
ヘリコプターのテールローターに代わるダクテッドファン技術「フェネストロン」の構造、歴史、利点、および技術的特性について解説します。

📌 主なポイント

  • フェネストロンは、ヘリコプターの回転トルクを打ち消すためのダクテッドファン方式の装置である。
  • 1960年代後半にシュド・アビアシオンによって開発され、SA340試作機で初めて採用された。
  • ブレードをダクト内に収める構造により、地上での接触事故を防ぐ高い安全性を備えている。

フェネストロン(Fenestron)は、ヘリコプターのメインローターによって発生する回転反作用(トルク)を打ち消すための装置であり、従来のテールローターに代わるダクテッドファン方式の技術です。フランス語で「小窓」を意味する言葉に由来し、シュド・アビアシオン(現エアバス・ヘリコプターズ)によって開発されました。

構造と技術的特性

従来のテールローターが数枚のブレードで構成されるのに対し、フェネストロンはダクト(外筒)内部に8枚から18枚程度の多数のブレードを不等間隔に配置しています。ダクト内に収められているため、ブレードの直径は小さく、その分高速で回転します。不等間隔の配置は、特定の回転域における共振を抑え、騒音と振動を低減させる効果があります。

EC 135 のフェネストロン
EC 135 に搭載されたフェネストロン
フェネストロンの構造( EC 135 )
フェネストロンの内部構造図

歴史

1960年代後半、シュド・アビアシオンが開発したSA340の試作2番機に初めて搭載されました。その後、SA341 ガゼルをはじめ、EC 120、EC 130、EC 135、AS365 ドーファン、EC 155など、多くの機種に採用されてきました。特許期限の経過後は、RAH-66 コマンチ(開発中止)、Ka-62、日本のOH-1、MH2000など、他社の機体にも類似のダクテッド・ファンテールローターが採用されています。

SA340試作2番機
フェネストロンを初めて搭載したSA340試作2番機

利点と欠点

利点

  • 安全性:ブレードがダクト内に保護されているため、地上作業員や周囲の物体との接触リスクが大幅に低減されます。
  • 騒音低減:ブレード先端の気流が整流されることや、不等間隔配置による振動抑制により、騒音特性が改善されています。
  • 効率:ダクテッドファン構造により、テールローターと比較して高い推力効率が期待できます。

欠点

  • 重量とコスト:ダクト構造が必要となるため、従来のテールローターと比較して重量が増加し、部品点数の増加に伴い整備コストが上昇する傾向があります。
  • 横風の影響:ダクト側面が風を受ける面積が広いため、横風の影響を受けやすい特性があります。
  • 異物吸い込み:強力な吸引力を持つため、不整地での運用時には小石などの異物を吸い込むリスクがあります。
EC120B
EC120Bのフェネストロン
OH-1
日本の観測ヘリコプターOH-1
Ka-62
Ka-62のテール部
MH2000
MH2000の機体
カブリG2
カブリG2

よくある質問

フェネストロンと従来のテールローターの主な違いは何ですか?
フェネストロンはファンがダクト(外筒)の中に収められているダクテッドファン方式であり、従来のテールローターはブレードが外部に露出しています。これにより、安全性や騒音特性に違いが生じます。
なぜフェネストロンのブレードは不等間隔に配置されているのですか?
一定の回転域での共振を防ぎ、ブレード同士の振動を打ち消し合うことで、騒音を軽減するために不等間隔で配置されています。
フェネストロンはどのようなヘリコプターに採用されていますか?
主にエアバス・ヘリコプターズ(旧ユーロコプター)の機体(EC135、AS365など)に多く採用されていますが、特許期限後はOH-1やKa-62など他社の機体でも類似の技術が使用されています。

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参考文献

  • Prouty, Ray, Helicopter Aerodynamics, Helobooks, 1985, 2004.
  • Eurocopter, "History of the fenestron", Rotor Online.
  • 日本航空技術協会, 『ヘリコプター・フライング・ハンドブック』.
  • 英国航空事故調査局 (AAIB) 報告書 (SA341G G-HAVA, YU-HEW).