気象学

フェレル循環:中緯度における大気循環のメカニズム

フェレル循環:中緯度における大気循環のメカニズム
地球の大気大循環の一つであるフェレル循環について、その定義、間接循環としての性質、および中緯度における熱輸送の役割を解説します。

📌 主なポイント

  • フェレル循環は、緯度30度から60度の中緯度帯に位置する大気循環である。
  • ハドレー循環や極循環とは異なり、熱力学的に駆動される直接循環ではなく、間接循環として分類される。
  • 中緯度における主な熱輸送は、偏西風の波動(傾圧不安定波)によって行われる。

フェレル循環(Ferrel circulation)は、地球の大気大循環において、緯度30度付近から60度付近の中緯度帯に形成される大気の循環構造です。南北両半球に存在し、19世紀の気象学者ウィリアム・フェレルによって提唱された理論に基づきその名が付けられました。

地球の大気循環のモデル
地球の大気循環のモデル

循環の構造と性質

地球の大気大循環は、赤道付近で上昇し緯度30度付近で下降する「ハドレー循環」と、極付近で下降し緯度60度付近で上昇する「極循環」の二つの直接循環を基本としています。これらに対し、フェレル循環はハドレー循環と極循環の間に位置し、低緯度側で下降し高緯度側で上昇するという「間接循環」の構造をとっています。

直接循環が熱源と冷却源によって直接駆動されるのに対し、フェレル循環はハドレー循環や極循環といった他の循環や、地球の自転、地表の熱収支などの影響を受けて成立しています。このため、一部の資料では「見かけ上の循環」とも表現されます。

中緯度における熱輸送

フェレル循環が支配する中緯度帯では、地表付近で偏西風が吹いています。直接循環が循環そのものによって熱を輸送するのに対し、フェレル循環における熱輸送の主役は、傾圧不安定波である偏西風の波動です。中緯度では温帯低気圧が東進することで気圧配置が日々変動し、偏西風が南北に波打つことで、低緯度から高緯度への熱輸送が行われています。

この熱輸送の効率は南北の温度差に依存しており、温度差が大きいほど波動が発達し、輸送量も増加します。また、温度風の関係により、偏西風の風速は上空ほど強まり、対流圏界面付近で最大となるジェット気流が形成されます。

よくある質問

フェレル循環はなぜ「間接循環」と呼ばれるのですか?
高温側で上昇して低温側で下降する直接循環とは異なり、フェレル循環は低緯度(高温側)で下降し、高緯度(低温側)で上昇するという構造をとっているためです。
フェレル循環の熱輸送はどのように行われますか?
主に偏西風の波動(傾圧不安定波)によって行われます。温帯低気圧の移動に伴う気圧配置の変動が、南北間の熱輸送に寄与しています。
フェレル循環という名前の由来は何ですか?
19世紀にこの循環構造を理論付けたアメリカの気象学者、ウィリアム・フェレルにちなんで命名されました。

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ハドレー循環極循環偏西風ジェット気流傾圧不安定

参考文献

  • 小倉義光『一般気象学』第2版、東京大学出版会、1999年。
  • 岩槻秀明『最新気象学のキホンがよ〜くわかる本』第2版、秀和システム、2012年。
  • 田中博『地球大気の科学』共立出版、2017年。