環境科学
晶氷(シガ):河川における氷晶現象

河川で発生する氷晶現象「晶氷(シガ)」のメカニズム、発生条件、および河川管理への影響について解説します。
📌 主なポイント
- ✓晶氷(シガ)は、過冷却状態の河川水中で生成される微細な氷の結晶である。
- ✓主に水面付近で生成された氷が流下する現象であり、かつて信じられていた「川底からの浮上」説は誤りとされている。
- ✓河川の流下断面積を減少させ、取水施設での障害を引き起こす可能性がある。
- ✓久慈川上流部は、低緯度地域における晶氷の発生地として知られている。
晶氷(しょうひょう、英: Frazil ice)は、厳冬期の河川において、水温が氷点下近くまで低下した際に水中で生成される微細な氷の結晶が、シャーベット状となって流下する現象です。日本では地域によってシガとも呼ばれます。この現象は、河川の流下断面積を減少させるため、取水施設における障害の原因となることがあります。
発生メカニズム
晶氷の発生は、河川水が過冷却状態になることで進行します。水温が0℃付近まで低下すると、水面付近の熱境界水層で局所的な冷却が生じ、微細な氷の結晶が形成されます。これが川の流れに乗って流下し、互いに付着・成長することでシャーベット状の塊となります。また、寒冷地では降雪が水面に加わることで同様の氷状物質が形成されることもあります。
かつては「川底の石の表面で生成された氷が浮上する」という説が唱えられていましたが、現代の学術的な観測では、大半は水面付近で生成された氷が流下するものであると理解されています。ただし、過冷却状態が進行すると、川底の石や護岸の周囲に「底氷(anchor ice)」と呼ばれる氷が形成されることもあります。

地域的特徴と影響
日本では、福島県と茨城県を流れる久慈川の上流部(矢祭町から大子町袋田付近)が、晶氷の発生地として知られています。この地域での発生は、世界的に見ても比較的低緯度で発生する流氷現象として注目されています。
晶氷は河川の流下能力を低下させるため、水力発電所や農業用水の取水口において、氷がスクリーンに詰まるなどの取水障害を引き起こすリスクがあります。そのため、寒冷地の河川管理においては、晶氷の発生予測や輸送量の観測が重要な課題となっています。
よくある質問
晶氷(シガ)はどのように発生しますか?
河川水が0℃近くまで冷却され、過冷却状態になることで水面付近に微細な氷の結晶が生成されます。これが流下する過程で成長し、シャーベット状になります。
川底から氷が浮き上がってくるという説は正しいですか?
いいえ、古くはそのように考えられていましたが、現代の観測では大半が水面付近で生成された氷が流下するものであるとされています。
晶氷が河川管理に与える影響は何ですか?
晶氷が流下することで河川の流下断面積が減少し、取水施設のスクリーンに詰まるなどの取水障害を引き起こす可能性があります。
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参考文献
- 吉川泰弘, 渡邊康玄, 早川博, 平井康幸、「河川解氷時の河氷の破壊と流下に関する研究」 『土木学会論文集B1(水工学)』 2011年 67巻 4号 p.I_1075-I_1080, doi:10.2208/jscejhe.67.I_1075
- 吉川泰弘, 渡邊康玄, 阿部孝章, 伊藤丹、「結氷河川における晶氷粒径分布と晶氷輸送量の現地観測」 『土木学会論文集B1(水工学)』 2013年 69巻 4号 p.I_697-I_702, doi:10.2208/jscejhe.69.I_697
- 吉川泰弘, 黒田保孝, 橋場雅弘, 入交泰文、「寒冷地河川における晶氷発生計算モデルの開発と取水障害の発生条件」『土木学会論文集B1(水工学)』 2015年 71巻 4号 p.I_1327-I_1332, doi:10.2208/jscejhe.71.I_1327